木三共の特徴や規模とおさえておきたいメリット・デメリット
限られた土地の中でできるだけアパートの収益率を高める方法として、3階建てにする選択肢が挙げられます。
ただ「3階建てといえば鉄骨造だし、費用の面で無理がありそう…」と、感じている方もいるのではないでしょうか。
そこで注目したいのが「木三共(もくさんきょう)」です。木三共にすれば、3階建ての木造の共同住宅の建築が可能になります。
「木三共とはどのような建物?」「特徴やメリット、デメリットが知りたい」と考えている方のため、詳細について解説します。
この記事を読むことによって木三共の魅力や、注意しておきたいポイントが理解できるようになるので、ぜひ参考にしてみてください。
Contents
木造3階建て共同住宅「木三共」とは
木三共とは、木造3階建ての共同住宅のことをいいます。
これまで、3階建以上の共同住宅を建築する際は「耐火建築物」の必要がありました。そのため、主流だったのは鉄骨や鉄筋コンクリートです。
ですが、法律の改正、準耐火建築物仕様の木造でも、条件を満たすことにより3階建の共同住宅が建築可能になりました。
3階建ての共同住宅が認められる建築基準を木三共と呼ぶこともあります。
木造3階建て共同住宅の適用条件
いくつか指定条件をクリアしていなければなりません。
大前提としておさえておかなければならないのが「防火地域」の外にあることです。
防火地域とは、市街地で火災が発生する危険性を防ぐ目的で設定された地域のことをいいます。
主に建物が密集している地域のほか、駅前などが設定されていることが多いです。消防車や救急車など緊急車両が通る幹線道路沿いも同様です。
これらに該当する防火地域は厳しい制限があり、準耐火建築物として木三共を建築することは認められません。
防火地域以外の地域で建築することに加え、以下のような条件があります。
適用条件1 主要構造部は1時間準耐火構造であること
1時間準耐火構造とは、柱、梁、壁、屋根の軒裏といったものに1時間の延焼抑制性能を持った建物のことを指します。
延焼抑制性能を持たせるためには、耐火被覆工事が必要です。火災が発生してから1時間は、消火活動ができなくても建物の構造を保てることが重要な条件です。
なお、一般準耐火構造は45分以上です。つまり、一般の準耐火構造よりも上の基準を満たすことが求められます。
適用条件2 避難に適したバルコニーが設置されていること
火災発生時に備え、避難経路として有効活用できる以下の条件を満たしたバルコニーが必要です。
- 床が1時間準耐火構造
- 避難ハッチ等の避難用の設備がある
- 避難用設備で地上に降りてから道路に到達するまでの道幅がおよそ90cm以上
- 避難のためバルコニーに出るまでの開口部の有効高さは1.8m以上、幅0.75m以上、開口部下端から床までの高さは0.15m以下
ただし、設置については以下の緩和条件も定められています。
- 各住居から地上に出るまでに通る通路や階段が十分な外気に開放されている
- 各住居の廊下・階段に面している窓やドアが防火仕様である
これらを満たす場合は必須ではなくなります。
適用条件3 敷地内通路を確保すること
敷地内には、建物周囲と道路の間に幅3m以上の通路を作る必要があります。
ただし、以下の条件をすべて満たす場合、通路の設置は求められません。
- 避難のため有効とされるバルコニーを設置している
- 各住居から地上に出るまでに通る廊下や階段が直接外気に開放されている
- 各住居の通路に面している開口部が防火仕様である
- 上下階の開口部との間に延焼を防ぐ庇(ひさし)が取り付けられている
適用条件4 開口部に防火設備を設けること
防火地域または準防火地域に限り、3階住居の外壁開口部に防火機能を持った設備を設けることが定められています。
ただし、以下の条件に該当する場合、防火設備は求められません。
- 3階の住居に防火設備以外の窓を設ける場合、その窓の周囲90㎝未満には他の窓を設けない
- 3階の住居には「防火設備以外の窓」と「他の窓」との間に50cm以上突出した庇(ひさし)・袖壁を設ける
これらの条件を満たしているか確認しましょう。
このように、木三共を建築するためにはさまざまな条件があります。
さらに緩和のための条件などもあるので、わかりにくいと感じてしまう方が多いようです。
木造3階建て共同住宅の規模はどのくらい?
規模は、床面積にして250~500㎡程です。500㎡を越えてしまった場合、地域によっては耐火建築物が必須となる可能性があります。
そのため、基本的には500㎡までの規模で考えましょう。
木造3階建て共同住宅のメリット
代表的なメリットは、以下の3つです。
メリット1 コストを抑えることが可能
木三共として認められる形で建築すれば、通常の3階建共同住宅のように耐火建築物にするのと比べ、大幅に建材や施工費用の削減が可能です。
仮に耐火建築物の条件を満たそうと思った場合、内壁、外壁、設備工事などは高額な建材を使ったり、特殊な施工を行ったりしなければなりません。
内壁・外壁についても同様です。1時間準耐火建築物にできれば、これらの費用を削れるので、コストダウンが可能です。
家賃に関して言えば、鉄筋コンクリートで作られた建物ほうが高く取れる可能性が高いです。
ただ、投資額が大きくなってしまい、結果として釣り合わなくなってしまうようなケースもあります。
そのため、できる限り建築費用を抑え、早期回収につなげられるのは大きなメリットです。
比較的安く間取りが変更できるメリットもあります。
メリット2 設計プランを柔軟に検討できる
木造は土地の形などに合わせて建築しやすいのがメリットです。
特に狭小地や変形地なども有効活用しやすくなります。
3階建てにすれば戸数も確保できることから、利回りを安定させやすくなるのも魅力です。
メリット3 入居者に安心感を与えられる
木三共を建築するにあたり、必要になるのが災害などに対する強さを計算した「構造計算」です。
どの程度まで地震や強風に耐えられるのかわかりやすくなるため、安全性をアピールすることに繋がります。
メリット4 節税が可能
木造は、法定耐用年数が22年と短いです。
そのため、減価償却が短く、一年により多くの金額を経費として計上できます。節税につなげられるポイントです。
メリット5 おしゃれな外観を実現可能
アパートを探している方の中には、見た目を重視して賃貸物件を選ぶ方もいます。
木造住宅の中には少し安っぽく見えてしまうところもありますが、木三共にする場合は耐火性能が求められます。
そのため、外壁がしっかりしており、重厚感や高級感を演出できるのが魅力です。
木造3階建て共同住宅のデメリット
さまざまな魅力がある一方で、デメリットもあります。以下を確認しておきましょう。
デメリット1 2階建てと比較すると費用と時間がかかる
木造2階建の共同住宅と比べると、規模が大きくなる分費用は高くなります。
2階建てでは不要な構造計算を行うのに時間と費用がかかるのもデメリットです。準耐火構造適応のための費用もかかります。
2階建よりも1階分回数が多くなるので、施工期間が長くかかるのもデメリットです。
デメリット2 建築会社選びが難しくなる
木造3階建て共同住宅の建築に対応している会社は、それほど多くありません。
会社選びに時間がかかってしまう可能性があります。
デメリット3 2階建と比較して部屋数が増えるとは限らない
木三共としての条件を満たすためにはさまざまな条件をクリアしなければならず、その中に「敷地内に通路を設けること」とされています。
3m以上の道幅が求められるため、場合によっては道幅を確保するためのスペースが必要になり、2階建と比較して部屋数が少なくなってしまうことがあります。
木三共の設計条件の建築基準法(国土交通省告示第255号)
木三共の設計条件の建築基準法は、国土交通省告示第255号に記載されています。
建築基準法第二十七条第一項に規定する特殊建築物の主要構造部の構造方法等を定める件
(国土交通省告示第二百五十五号)
第一 建築基準法施行令(以下「令」という。)第百十条第一号に掲げる基準に適合する建築基準法(以下「法」という。)第二十七条第一項に規定する特殊建築物の主要構造部の構造方法は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一 法第二十七条第一項第二号に該当する建築物(同項各号(同項第二号にあっては、法別表第一(一)項に係る部分に限る。)に該当するものを除く。) 準耐火構造又は令第百九条の三各号に掲げる基準に適合する構造とすること。
二 地階を除く階数が三で、三階を下宿、共同住宅又は寄宿舎の用途に供するもの(三階の一部を法別表第一(い)欄に掲げる用途(下宿、共同住宅及び寄宿舎を除く。)に供するもの及び法第二十七条第一項第二号(同表(二)項から(四)項までに係る部分を除く。)から第四号までに該当するものを除く。)のうち防火地域以外の区域内にあるものであって、次のイからハまでに掲げる基準(防火地域及び準防火地域以外の区域内にあるものにあっては、イ及びロに掲げる基準)に適合するもの 一時間準耐火基準に適合する準耐火構造とすること。
イ 下宿の各宿泊室、共同住宅の各住戸又は寄宿舎の各寝室(以下「各宿泊室等」という。)に避難上有効なバルコニーその他これに類するものが設けられていること。ただし、各宿泊室等から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路が直接外気に開放されたものであり、かつ、各宿泊室等の当該通路に面する開口部に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられている場合においては、この限りでない。
ロ 建築物の周囲(開口部(居室に設けられたものに限る。)がある外壁に面する部分に限り、道に接する部分を除く。)に幅員が三メートル以上の通路(敷地の接する道まで達するものに限る。)が設けられていること。ただし、次に掲げる基準に適合しているものについては、この限りでない。
(1) 各宿泊室等に避難上有効なバルコニーその他これに類するものが設けられていること。
(2) 各宿泊室等から地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路が、直接外気に開放されたものであり、かつ、各宿泊室等の当該通路に面する開口部に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられていること。
(3) 令第百二十九条の二の三第一項第一号ハ(2)に掲げる基準に適合していること。
ハ 三階の各宿泊室等(各宿泊室等の階数が二以上であるものにあっては二階以下の階の部分を含む。)の外壁の開口部及び当該各宿泊室等以外の部分に面する開口部(外壁の開口部又は直接外気に開放された廊下、階段その他の通路に面する開口部にあっては、当該開口部から九十センチメートル未満の部分に当該各宿泊室等以外の部分の開口部がないもの又は当該各宿泊室等以外の部分の開口部と五十センチメートル以上突出したひさし等(ひさし、袖壁その他これらに類するもので、その構造が、令第百二十九条の二の三第一項第一号ハ(2)に規定する構造であるものをいう。以下同じ。)で防火上有効に遮られているものを除く。)に法第二条第九号の二ロに規定する防火設備が設けられていること。
さまざまな魅力がある木三共
いかがでしたか?木三共の概要やメリットやデメリット、注意しておきたいポイントなどを解説しました。
自身が経営するのに木三共が向いているのかについて判断する材料となったのではないでしょうか。
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