アパート経営で個人事業主が白色申告を行うメリットとは?デメリットと合わせて紹介
アパート経営における所得が一定額以上に達する場合は、確定申告を行うことが必要です。
なお、確定申告の方法の1つとして、“白色申告”が挙げられます。
白色申告のメリットやデメリットを知りたいとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、白色申告のメリット・デメリットを中心に、白色申告に関する基本的な情報をお伝えします。
アパート経営への挑戦をお考えの方は、ぜひ最後までお読みください。
Contents
白色申告とは?
白色申告とは、確定申告を行う方法の1つです。
確定申告の方法としては、ほかに青色申告があります。
白色申告は青色申告と比べて、手続きが簡単であるという点が特徴です。
そのため、事業規模が小さい場合には、白色申告を行うことで、手間を減らせるといったメリットがあります。
なお、法律の改正に伴い、2014年1月以降、個人事業主が白色申告を行う場合には、記帳と帳簿書類の保存が義務づけられました。
以下の記事では、アパート経営を個人事業主として行うメリットを紹介しています。ぜひご覧ください。
アパート経営を個人事業主として行うメリットとは?注意点も併せてご紹介
アパート経営で白色申告を行うメリット
アパート経営において白色申告を行うメリットとしては、下記の点が挙げられます。
【メリット】
- 事前の届け出が不要である
- 帳簿の記帳が比較的簡単である
- 損益通算を行える
- 専従者控除を受けられる
白色申告を行う場合は、税務署への事前の届け出が不要であるほか、帳簿の記載は比較的簡単な内容でよいと定められており、また帳簿の様式や種類にも決まりはありません。
また、白色申告を行うことで損益通算が可能となり、税金の還付を受けられるため、節税対策にもなります。
損益通算とは、簡単にいうと赤字の所得と黒字の所得を相殺することです。
たとえば、その年にアパート経営で損失が発生した場合、ほかの所得の利益と通算を行うことが可能であるため、不動産所得が赤字の場合でも所得の控除を受けられるのです。
さらに、白色申告を行うことで、専従者控除も受けられます。
専従者控除とは、事業主と生計をともにする親族が、事業主の行う事業に従事している場合、一定の条件を満たせば、親族に支払う給与の一部を必要経費として計上できる制度です。
この専従者控除を行うことで、所得の一部が控除されるため、こちらも節税効果が期待できます。
専従者控除を受けるための3つの条件は、下記をご覧ください。
【条件】
- 白色申告者と生計をともにする配偶者、あるいは親族であること
- その年の12月31日時点での年齢が満15歳以上であること
- 白色申告者の営む事業に年間6か月以上従事していること
また、専従者控除を行える金額の上限は、配偶者の場合は86万円、それ以外の親族の場合は1人につき50万円です。
なお、この専従者控除は、青色申告における優遇措置として後ほど紹介する“専従者給与”とは異なる制度であるという点には注意が必要です。
アパート経営で白色申告を行うデメリット
アパート経営で白色申告を行うデメリットとしては、下記の点が挙げられます。
【デメリット】
- 特別控除を受けられない
- 翌年以降に赤字を繰り越せない
白色申告を行う場合は、配偶者の所得に応じて一定の所得控除を受けられる制度、通称“特別控除”の対象とはなりません。
また、アパート経営で万が一損失が発生した場合、赤字を翌年以降に繰り越せないというデメリットもあります。
この赤字の繰り越しは、正式には“純損失の3年間繰越控除”とよばれ、その年の赤字を、翌年以降に得た所得の利益と相殺できる制度です。
白色申告では、この赤字の繰り越しを行えないため、翌年以降に所得控除を受けられません。
青色申告と白色申告の違い
青色申告と白色申告の違いは、下記の表をご覧ください。
青色申告 | 白色申告 | |
事前申請の必要性 | あり | なし |
申告手続き | 比較的複雑 | 簡易 |
特別控除 | 受けられる | 受けられない |
専従者給与 | 対象 | 対象外 |
赤字の繰り越し | 行える | 行えない |
青色申告と白色申告の違いとしては、事前申請の必要性の有無や、帳簿の記載方法などが挙げられます。
青色申告を行う場合は、事前申請が必要であり、申請の期限はアパート経営を開始してから2か月以内、もしくは青色申告に変更する年の3月15日までです。
また、青色申告の場合は、帳簿の様式や保存期間に細かいルールがあり、作成も比較的難易度が高いといえます。
一方で、白色申告は、事前申請が不要なうえ、手続きが比較的簡易なため、事業を始めて間もない方には、白色申告がおすすめです。
なお、申告を行うことで受けられる優遇措置の多さや節税効果の高さに関しては、青色申告に軍配があがります。
青色申告は、特別控除や赤字の繰り越しのほか、家族への給与を“専従者給与”として、経費計上することが可能なため、白色申告と比較して、より高い節税効果を得られるのです。
このように、白色申告と青色申告とでは、申請方法や、得られる節税効果に違いがあります。
そのため、ご自身の想定されているアパート経営の方針に合った申告方法を選ぶことが大切です。
アパート経営において白色申告を選ぶ方の理由
アパート経営において、白色申告が選ばれる理由としては、経理処置が簡単であるため、時間と手間を節約できるという点が挙げられます。
毎月の帳簿の記帳と管理をしっかりと行っていれば、白色申告にあたって複雑な作業を行う必要はありません。
そのため、アパート経営を始めて間もない方や、小規模・中規模のアパート経営を行われる方は、上記の理由から白色申告を選ばれるケースが多いといえます。
アパート経営で確定申告が必要になる所得はいくら?
アパート経営において、不動産所得が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
不動産所得とは、所得税法で定められている所得区分の1つであり、家賃収入から必要経費を差し引いた金額のことを指します。
具体的には、不動産所得の金額は、「家賃収入を含む総収入金額」-「必要経費」で求められます。
家賃収入が20万円を超えていたとしても、所得が20万円を下回っている場合は確定申告を行う必要はありません。
とはいうものの、所得が20万円を下回っている場合でも、確定申告を行ったほうがよい場合もあります。
たとえば、不動産所得がマイナスの場合は、確定申告を行ったほうがよいといえるでしょう。
なぜなら、アパート経営における不動産所得で損失が発生した場合は、給与所得などほかの区分の所得の利益と通算し、所得の控除を受けることが可能であるためです。
このように、アパート経営において確定申告を行う必要がない場合でも、所得がマイナスの場合は、確定申告を行うことで結果的に節税できるというメリットがあります。
なお、確定申告が必要であるにもかかわらず、確定申告を行わない場合や、期限を過ぎてしまった場合は、状況に応じて加算税のペナルティが課せられます。
そのため、アパート経営において確定申告が必要な条件を満たしているのであれば、期限内に正しく申告を行いましょう。
以下の記事では、確定申告や家賃収入の課税方法などを紹介しています。その他にもアパート経営における基本的な知識を解説していますので、ぜひご覧ください。
白色申告に必要な書類
ここからは、白色申告を行ううえで、用意すべき書類の一覧を紹介します。
下記は、白色申告に必要な書類の一覧です。
- 確定申告書に添付する各種控除関係の書類
- 確定申告書A
- 収支内訳書
「確定申告書に添付する各種控除関係の書類」としては、医療保険や生命保険などの各種保険の証明書類が挙げられます。
また、住宅ローンの控除を受ける場合は、住宅ローンの残高証明書のほか、付随して必要となる登記事項証明書や住民票の写し、住宅借入金等特別控除額の計算明細書が必要です。
確定申告書Aや収支内訳書は、最寄りの税務署で入手できるほか、国税庁のWebサイトからダウンロードも可能です。
なお、上記の書類の記入をスムーズに行うためには、普段から帳簿をつけておく必要があります。
また、記帳だけではなく、領収書や請求書も保存しておきましょう。
白色申告の記帳のやり方
続いて、白色申告の記帳方法を紹介します。
白色申告の記帳方法は、基本的に日頃の収支の合計金額を記録すればよいため、青色申告の記帳方法と比較して、簡単です。収支の合計金額を算出するためには、根拠となる領収書やレシートなどを、普段から収集および保存しておくことが必要です。
収支の合計金額が算出できたら、前述した必要書類である「確定申告書A」と「収支内訳書」を記入のうえ、最寄りの税務署に提出しましょう。
なお、これらの書類は、確定申告の提出期限から起算して5年間保存することが義務づけられています。
アパート経営の白色申告で経費計上できるもの
アパート経営の白色申告で経費計上できるものの一例は、下記をご覧ください。
- 租税公課
- 減価償却費
- 光熱費
- 人件費
- メンテナンス費
- 管理委託費・広告宣伝費
- 支払手数料
- 通信費
- 交通費
- 支払利息
- 消耗品購入費
- 諸会費
- 損害保険料
- 新聞図書費
- 立ち退き料
- 税理士・司法書士への報酬
アパート経営における還付金の金額は、しっかりと経費計上を行えるかどうかによって左右されます。
白色申告を行うことによる税金面での優遇措置を漏れなく享受するためにも、適切な経費計上を行うことが大切です。
前述のリストにおける租税公課とは、土地・建物の取得にかかる取得税、および維持にかかる固定資産税のことを指し、所得税・住民税・法人税は、租税公課には含まれません。
また減価償却費とは、大規模な設備購入などにかかった費用を、設備の使用可能期間に応じて分割したうえで、経費として計上できる会計処理の方法です。
なお、白色申告で経費計上できないものとしては、ローン返済の原本や、住民税、所得税、贈与税などが挙げられます。
白色申告に際しての経費計上で、仕分け先がわからない項目がある場合には、雑費として計上することが可能です。
また、このようなケースでは税務署に相談することで適切な仕分け先を教えてもらえるため、相談に際して必要な領収書やレシートなどは日頃から保存しておきましょう。
白色申告の経費における注意点
前述した、“アパート経営の白色申告で経費計上できるもの”のうち、人件費と減価償却費に関しては、計上に際してルールが定められているため、注意が必要です。
白色申告では、家族などに人件費として支払う給与に関して、経費として計上できる金額の上限が定められています。
経費として計上できる金額の上限は、配偶者の場合は86万円、そのほかの親族は1人あたり50万円です。
また、減価償却費に関しても決まりがあります。
仮に、10万円以上20万円未満の減価償却資産を購入した場合、3年間で均等に償却する“一括償却資産”もしくは“減価償却資産”としての処理が必要です。
減価償却資産とは、高額で長期間使用できる資産のことを指し、国が定めた耐用年数や償却率に準じて、使用年数に応じて減価償却が行われます。
なお、20万円以上の減価償却資産の場合は、すべて減価償却資産として扱われるという決まりがあります。
小規模なアパート経営の場合は白色申告をおすすめします
いかがでしたでしょうか。
本記事では、アパート経営において白色申告を行うメリット・デメリットや、青色申告との違いを中心に、白色申告を行う際の経費計上における注意点などを紹介しました。
白色申告は、申告の際の記帳方法が簡易であるというメリットがあり、小規模なアパート経営や、アパート経営を始めて間もない場合におすすめの申告方法です。
一方で、白色申告を行ううえでは注意点もあるため、しっかりと押さえたうえで申告を行いましょう。
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