物件を購入した瞬間、あなたは不動産オーナーとなり、その物件の「大家」となります。物件の購入はゴールではなく、不動産投資の始まり。オーナーとしての見識、打ち手が、その後の不動産投資の成否を大きく左右することになります。ここでは、大家業に起きがちな失敗とその対策について、考えてみたいと思います。
- この記事の目次(読了までの目安時間:4分)
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- ・自分で管理することによる失敗
- ・すべてを管理会社に任せたことによる失敗
- ・修理・修繕にまつわる失敗
- ・サブリースの失敗
- ・出口戦略にまつわる失敗
自分で管理することによる失敗
大家業で起きがちな失敗は、管理にまつわるものです。勉強をかねて、まずは小さなアパートなどを購入し、自分で、または家族に管理を任せようという方も多いのでは? しかし、実際のところ大家がなすべきことは、共用部の清掃にはじまり、各設備の修理・修繕、入居者のクレーム対応、さらには家賃の集金まで、非常に幅広いものがあります。都市圏など、入居者の生活時間帯がバラバラだったりすると、いつ、どんな連絡が入ってくるか、大家側がコントロールすることは不可能です。そのうえ入居者同士のトラブルが起きたりしては、管理を始めたばかりのオーナーさんには手に余るケースも考えられます。管理に自身の時間を割かれ続けた結果体調を崩し、やむを得ず大家業から手を引くというケースするあるのです。
実は仕事の中身が濃い大家業は、経験のない方が自ら取り組むには想像以上に負担が大きいものです。特に遠方の物件を所有したり、2軒目3軒目と物件を買い増していくことを考える場合、所有する物件すべてを自分で管理することはそもそも不可能です。管理で失敗しないためにも、物件の購入前に一度管理の方向性について検討し、少しでも自己管理に不安があれば、迷わず「管理会社」への委託を検討しましょう。修理修繕、24時間365日のクレーム対応はもちろん、集客や集金のノウハウに長けた会社もありますので、オーナーとしての経営方針に沿った管理会社選びを行いましょう。
すべてを管理会社に任せたことによる失敗
いっぽう、管理会社にすべてを任せきりにしたことで起きる失敗もあります。家賃を滞納している入居者からなかなか滞納分の家賃を集金できない、空室を避けるための客付けの施策が的外れで、なかなか状況が改善しない、そもそも「家賃を下げる」こと以外に客付けノウハウを持たない…などです。
もちろんすべての責任を管理会社に帰することはできませんが、特に空室、家賃に関する問題は、収支に直結しますので、できる限り避けたいものです。トラブルが起きてから「こんなに頼りない会社だったのか!」と愕然としないよう、管理会社を選定する際、「家賃滞納者が出たら?」「入居者同士のトラブルが起きたら?」「深夜の問い合わせにどう対応する?」などなど、想定されるトラブルについて質問し、納得いく回答を得られた管理会社に委託するというのも、大家として取ってしかるべき手段です。
また、すでに入居者のいる中古物件とは異なり、新築の物件を所有する場合は、家賃の設定をオーナー自身で行うことができます。その際も管理会社に任せきりにするのではなく、地価や路線価など、家賃の算出根拠となる情報をチェックしながら、「空室を作らず利益を生む」家賃の設定に、オーナー自身がコミットするよう心がけましょう。
修理・修繕にまつわる失敗
中古物件を購入する場合、空室は中を確認できても、入居者がいる場合は内見できないケースが多くあります。そうしたケースでは、確認できた部屋はキレイにリフォーム・リノベーションがなされていたのに、確認できなかった部屋についてはボロボロで、しかも頻繁に修理・修繕の費用が必要になることもあるので注意が必要です。
また、集客と物件価値の維持両方の観点から、マンション・アパートともに10年~15年周期で大規模修繕を行うことが理想とされています。大規模修繕の際は、大きな費用負担が発生しますので、予め資金面での計画を立てておきましょう。その意味でも、中古物件を購入する場合は、規模の大小を問わず、修繕履歴を細かく確認することが重要です。細かな修繕費用を捻出するのが手間だという場合には、思い切って新築物件に投資をするという手段もあります。
サブリースの失敗
物件のオーナーとなるうえで、家賃収入の有無は死活問題です。その保険として、注目を集めているのがサブリース(家賃保証)です。家賃収入の10%をサブリース料として支払うことで、空室分の家賃も保証されるこのシステムですが、この「保証」は永久的なものではなく、2~3年ごとに空室状況や周辺の家賃相場を参考に見直していくケースが一般的です。そのため、サブリースを利用する場合は「家賃保証を受けるために、家賃を下げる」といった選択に迫られる可能性があることに注意が必要です。
出口戦略にまつわる失敗
不動産投資を行っていくうえで、既存の物件を現金化し、新たな投資を行うことは常套手段として考えられます。しかし、空室率が高い、修理・修繕履歴が不明確、隣地との境界策定ができていない…などの問題から、「物件を売りたい(手放したい)」と思っても売れない事態に陥ることがあります。出口戦略を含め、不動産投資を投資効果の高いものにしていくためにも、「自分以外の投資家は自分以上に細かく物件をチェックしている」という前提に立ち、いざというときに「売れる物件」となるよう、経営的な観点から物件の運営を行いましょう。