大家が抱えるリスクとは?賃貸経営のメリットとともに解説
将来の資産形成のために、賃貸経営に挑戦したいとお考えの方も多いでしょう。
メリットもたくさんある賃貸経営ですが、ノウハウを知っておかないと予期せぬリスクを抱えてしまうこともあります。
そこで本記事では、賃貸経営で大家が失敗したり、損をしたりする危険とその対策方法を徹底解説します。
賃貸経営の知識を深めて、賃貸物件を最大限に運用したいとお考えの方は、ぜひこの記事を最後までご覧ください。
Contents
賃貸経営とは?
大家として、賃貸経営の概要を把握する必要があります。まずは、賃貸経営の基礎についておさらいしましょう。
賃貸経営とは、不動産投資の一種です。
現役世代が投資目的で始めるだけでなく、相続税などの節税対策にもなることから、リタイア後に興味を持ち始める方も多くいらっしゃいます。
賃貸経営では、自身が物件の大家となり、入居者から家賃を支払ってもらうことで、収入を得ます。
家賃収入は、部屋の空室数に応じて変動するため、満室であれば家賃の全額を得られますが、空室があれば、そのぶんの家賃収入は得られません。
空室期間をいかに作らないかが鍵となるので、大家自身の努力や事前のリサーチが欠かせないのです。
なお、物件の管理は大家が自ら行うこともありますが、多くは賃貸管理会社に任せるのが一般的です。
以下で大家または、管理会社が行う業務をまとめました。
物件を管理するための業務
- 巡回や清掃といった日常メンテナンス
- 入居者からの家賃集金と大家への送金
- 入居者からの問い合わせ対応
このような業務を日頃からきめ細かに行えば、入居者の満足度が向上し、空室リスクを下げることができます。
結果的に、賃貸経営の成功につながっていくのです。
賃貸経営の仕組み
賃貸経営を始めるときは、まず大家が金融機関から融資を受けて売主から物件を購入し、入居者を募ります。
入居者が決まれば、買主である大家は毎月家賃収入を得ることができます。
ほかにも、礼金や更新料も家賃収入の一部として計上可能です。
この家賃収入から、ローンの返済額だけでなく、管理費や修繕費、共用部分の光熱費、火災保険料、固定資産税といった物件維持費を差し引いた利益が大家の収益になります。
賃貸経営の3つの手法
賃貸経営における物件の管理方法には、いくつか種類があるのはご存じでしょうか?
管理の仕方をよくわからないまま決断してしまうと、後悔することにつながりかねません。
以下で、物件の管理方式をまとめたのでご覧ください。
①自主管理方式
物件を大家自身で管理する方法が、自主管理方式です。
入居者の募集や対応、物件の管理など、すべての作業を大家が行うので、管理会社に委託するコストはかかりません。
さらに、仲介業者やリフォーム業者と直接やり取りするので、賃貸経営や物件管理に関する知識を学べるという側面もあります。
初めての不動産投資で、規模の小さなアパートから始めるのであれば、自主管理を視野に入れてもよいでしょう。
ただし、家賃交渉やクレーム対応、入居者とのトラブルなどは直接対応する必要があります。
問い合わせの電話がいつ来るかも把握できず、緊急時は大家が物件に駆けつけなければなりません。
これらを考慮すると、副業で賃貸経営したいとお考えの方では、手間や時間がかかり、負担が増えてしまうので、次項で説明する管理委託をおすすめします。
②管理委託方式
管理委託方式は、物件の管理業務を賃貸管理会社に委託する方式です。
物件管理に必要な業務全般を管理会社が代わりに行うため、大家の手間はぐっと減ります。
契約時にどこまで管理会社に任せるのか、といった管理の裁量を大家自身で決めることも可能です。
なお、管理委託方式を選択した場合、家賃収入のおよそ5%の管理委託手数料の支払いが必要なことは覚えておきましょう。
③サブリース(一括借り上げ)方式
サブリース方式は、賃貸管理会社が、大家が保有する賃貸物件を一括で借り上げ、入居者に又貸し(転貸)する管理方式です。
管理会社に物件の管理を任せる点では管理委託方式と同じですが、大家が毎月得られる家賃収入に違いがあります。
サブリース契約の最大の特徴は、入居者がいない空室の場合でも家賃収入が見込め、なおかつ管理の手間をサブリース会社に丸投げできる点です。
たとえ入居者が0人でも家賃収入を得られるので、空室リスクを考慮しなくても済むのです。
家賃収入の賃料は、サブリース会社との契約で決まります。この割合は、空室の有無にかかわらず、およそ90%前後であることが多いです。
また、入居者からの礼金や管理費などは、サブリース会社のもとに渡るので、大家が受け取ることはできません。
賃貸経営を行うメリット
実際に、大家として賃貸を経営することで、どのような恩恵を受けることができるのでしょうか?
以下でメリットを解説します。
メリット➀収入源を確保できる
物件に入居者がいれば、毎月安定した家賃収入を得られるのが、賃貸経営の最大のメリットです。
本業がある方は、賃貸を経営することで複数の収入源を確保できます。
万が一、病気やケガで働けなくなり大幅に収入が減少しても、家賃収入があれば無収入の危機を逃れられるのです。
そのため、家賃収入はリスク分散の面からメリットが大きいといえます。
賃貸経営の収入が100%手元に残るわけではなく、「家賃収入-経費」であることは留意しておくべきですが、いざというときの資金があるのは精神的な安心につながります。
メリット②税金対策になる
賃貸物件を資産として保有していると、結果的にいくつかの面で節税につながります。
以下で、税金の種類別に節税効果がある理由を詳しく解説します。
相続税
相続税は、財産の所有者が亡くなったあとに、その財産を受け継ぐ相続人に課せられる税金です。
資産は、現金でそのまま相続させるよりも、不動産として相続させたほうが相続税を節約できます。
なぜなら、不動産にかかる相続税は、相続税評価により計算されるからです。
不動産の価値は、相続税評価額が実勢価格の80%を目安に決定されるので、1億円の不動産の評価額は、8,000万円程度になります。
実際の資産価値よりも低い評価を受けるため、資産を100%で保有するよりも、不動産で相続したほうが、支払う相続税が少なく済むというわけです。
贈与税
財産を他人から無償で譲り受けたときに、受け取った側に課される税金が贈与税です。
なお、110万円の基礎控除があらかじめ設定されているので、年間で110万円までの財産であれば、贈与税はかかりません。
贈与税を節税できる仕組みは、相続税と共通しています。
相続税は、対象となる資産の相続税評価額で計算されるルールですが、贈与税も同じです。
この方式で算出される不動産評価額は、実際の価値よりもおよそ2~3割下がります。
つまり、相続税と同じで、不動産を現金に換えて贈与するよりも不動産として贈与したほうが節税につながるということです。
所得税・住民税
所得税は、収入から経費を差し引いた所得の額に応じて課されます。
日本は、所得が多くなるにつれて税金も多くなる「累進課税制度」を採用しており、企業勤めの会社員の場合、あらかじめ給与から所得税が差し引かれて支給されています。
そして住民税は、居住地の市区町村から課される税金です。
こちらも収入に応じて、税額が決定されます。
所得税には、「分離課税」「総合課税」がありますが、賃貸経営で得た家賃収入は、総合課税の中に含まれます。
この総合課税は、黒字所得から赤字所得を引いた「損益通算」ができるのです。
損益通算とは、ある所得でマイナスになってしまったときに、ほかの所得にプラスして相殺できるものをいいます。・
つまり、万が一賃貸経営で赤字を被っても、本業の収入から赤字分を差し引くことができるということです。
所得税や住民税は、赤字分を差し引いた額に課されるため、結果的に節税につながります。
メリット③資産を作ることができる
将来に向けて、確かな資産を形成できる点も、賃貸経営のメリットといえます。
家賃収入によって長期で安定的な収入を見込めるので、将来のマネープランを立てやすくなるでしょう。
定年退職後に年金を受給したり再雇用で就職したりしても、現役時代の収入と比べれば心もとないかもしれません。
お金で困らない、快適な老後生活を過ごすには、資産形成で資金を確保することが鍵になります。
老後を考えて現役世代のときから資産の土台を作るのは、早いに越したことはありません。
賃貸経営に潜むリスクと対策
賃貸経営はメリットだけではなく、実際に運用することで出てくる問題もあります。
次項から、賃貸経営につきまとうリスクと、その対策を解説します。
空室
空室が続けば、十分な家賃収入を得ることは困難です。
家賃収入は、入居者がいて成り立つものですから、空室が長引いてしまうのは痛手となります。
建設に対する制限があまり設けられていないアパートは、多少不便な立地でも土地があれば建設できます。
そのため、物件周辺エリアの事前調査を怠れば、需要が低い物件を購入してしまう可能性があるのです。
特に、「周辺の治安が悪い」「駅から遠く立地がイマイチ」といった条件は、需要を満たせずに、空室につながりかねません。
対策
家賃収入を得るためには、第一に賃貸需要のあるエリアを知ることが重要です。
賃貸需要の少ない地域で賃貸を経営しても、物件が満室になる可能性は低いからです。
さらに、地域の特色や世帯状況などを考慮して、どのような物件に需要があるのかを考えましょう。
たとえば、都心から離れたファミリー層が多い地域で、ワンルームや1Kといった単身向けの物件を経営しても需要を満たすことは困難を極めます。
周辺の地域性を把握しなければ、効果的な投資物件を選ぶことはできません。
ご自身で情報を掴むのが難しい場合は、不動産会社に相談し、物件周辺の事前調査を必ず行うようにしてください。
老朽化
築年数が経過すると、室内の水回りの劣化が特に目立つようになり、頻繁に修繕が必要になります。
古さが際立ってくると、築浅できれいな新築アパート・マンションには劣ってしまうので、入居者で満室にするには、ほかよりも秀でた要素が必要です。
また、老朽化が進み築年数が古くなると、当然ながら家賃を引き下げなければなりません。
そのうえで必要な修繕を怠った古い物件は、入居希望者が減るので、さらに家賃を下げることにつながります。
対策
築年数の古い物件が、築浅の物件に対抗するための打開策は、大規模修繕を行うことです。
大規模修繕とは、工期が長期間で工事費が高額になるものをいい、外壁補修や水回りの設備、あるいは内装もすべて変えることを指します。
特に、おすすめなのは、「和室から洋室への変更」「ユニットバスから風呂トイレ別に変更」「オートロックや監視カメラの追加」などです。
また、外壁補修は見た目がきれいになるだけでなく、タイルの落下や剥がれ落ちといった事故を防ぐことにもつながります。
大規模修繕を行えば、新しい設備に総入れ替えするので、古い設備を修理しながら使いつづけるよりも、長期的な目で見たときのコストパフォーマンスが高くなるでしょう。
さらに、外観や内装をフルリノベーションすることによって、入居者を確保しやすくなり、家賃の下振れを防げます。
内装が新築のようにきれいであれば、築年数をあまり気にしない入居者も多数いるからです。
ただし、このような設備の導入は、必ずしも正解とは限りません。
物件のグレードやエリアによって本当に必要な設備なのかは、大家自身でも見極める必要があります。
災害・火災
自然災害や火災は、不動産投資を行う上で考えたくない事象の一つですが、「いつか起こるかもしれない」と考えて損はありません。
管理している物件が予期せぬ被害を受けた場合、入居者が安全に住むことができなくなるので、家賃収入が手元に入る可能性は限りなく低くなります。
さらに、物件の修繕も視野に入れなくてはなりません。
対策
物件を購入するときは、必ずハザードマップを見て、水害や土砂崩れのリスクが少ない土地であるかを確認して選んでください。
災害リスクを一つでも排除することが、大切です。
物件を建てたあとや、購入したあとは、火災保険や地震保険に必ず加入しましょう。
火災保険は、火災だけでなく落雷や水害、雪害といったさまざまな自然災害による損失をカバーしてくれます。
いざというときにこれらの保険に加入していれば、高額な修繕費に備えられるでしょう。
家賃滞納
残念ながら、入居者全員とは円満な関係を築けない可能性もあります。
特に、物件を管理会社に委託していると、どのような方が入居しているのかわからないため、入居者との思わぬトラブルが起きてしまうこともあるかもしれません。
よくみられるトラブルは、家賃滞納です。
何か月も家賃が未納であれば、そのぶんの家賃収入は得られません。
特に厄介なのは、入居者の夜逃げが発覚したときです。
家賃を滞納している入居者と連絡が取れなかったり、ガスメーターが止まっていたりといった兆候がみられたら要注意です。
ただし「夜逃げかも?」と思っても、大家だからと勝手に立ち入ることは避けましょう。
たとえ物件の大家だったとしても勝手に立ち入ると、不法侵入罪で罰せられる可能性も捨てきれないからです。
何か月も家賃の滞納が続き、入居者と連絡が取れないときは、必ず警察や保証人、入居者の家族に連絡を取り、同行してもらったうえで立ち入ってください。
万が一、夜逃げしていた場合、家具や家電はそのままに、もぬけの殻であることがほとんどです。
これらの撤去費用や、夜逃げの法的措置にかかる費用を考えると、夜逃げの経済的損失は計り知れません。
アパート経営をしていると、時には賃借人に立ち退き料をお支払いして退去をしていただかなければいけないこともあります。
以下の記事では立ち退きの基本的な知識や立ち退き料の相場などを解説しています。あわせてご覧ください。
アパートの立ち退き料はどう決まる?立ち退き料を少なくするためのコツとは
対策
家賃滞納を事前に防ぐには、「厳しい入居審査」「家族や職場の連絡先の入手」「日頃のコミュニケーション」が有効です。
しかし、入居審査があまりにも厳しすぎると、入居できる方が限られてしまい、空室がなかなか埋まらないといったことも起こりえます。
また、複数の入居者との密なコミュニケーションは現実的に考えて限界があります。
これらを考慮すると、初めからトラブル対処に慣れている管理会社に管理を委託してしまったほうが、現実的かもしれません。
委託料はかかりますが、日頃の安全・安心に変えられるのは大きいですよね。
管理の負担
自主管理方式では、入居者の募集から契約、家賃の管理、建物の保全といったさまざまな業務を大家がすべて行わなければなりません。
物件の設備故障や入居者のクレーム対応などは、常に起こりうるため、本業の傍ら副業で賃貸を経営している方にとっては、管理の負担が重くのしかかります。
また、物件を複数所有している場合や、居住地から所有物件までの距離が遠い場合は、身体的疲労もともなうでしょう。
不動産管理に手を焼いて、本業が疎かになってしまっては本末転倒です。
対策
管理の負担を抑えて賃貸経営を行うには、適切な管理方式を選択することが重要です。
賃貸経営の手法の章でも解説しましたが、第三者に管理を委託する方法としては、管理委託方式またはサブリース方式が挙げられます。
管理委託方式では、家賃収入の5%程度を管理会社へ支払うことで、物件の点検やメンテナンス、退去後のリフォームなどを委託できます。
どこまで管理会社に任せるのかは、大家が契約時に決めることが可能です。
サブリース方式では、およそ10%前後の手数料が満室想定時の家賃から引かれますが、物件管理に関する業務をすべて任せることができます。
手数料は低くても、大家の経営判断が残されている管理委託方式か、手数料は高くても管理の手間をすべて丸投げできるサブリース方式かで、管理の負担は変化します。
大家が抱える賃貸経営のリスクを理解して、将来の資産形成を考えよう
今回の記事では、賃貸経営の仕組みとリスクを解説し、それに対するリスクマネジメントもご紹介しました。
賃貸経営は、自身の資産を増やすだけでなく、節税というメリットも得られます。
運用を順調に進めるには、賃貸経営に適した土地であることを見極め、人口流入の多い地域の物件に投資する必要があります。
空室を作らないために、賃貸需要が飽和しているエリアよりも、近年需要が高まっている地方中枢都市への投資が狙い目です。
株式会社マリモは、耐久性と収益性の高い木造アパートを自社で建設し、ご紹介しています。
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