アパートの耐用年数と構造別の目安は?年数経過後も利益を出し続ける方法も解説


アパート経営において、「耐用年数」は収益性を大きく左右する重要な要素です。
不動産投資を始めようとする多くの方が、アパートの経営期間や収益計画に不安を感じています。
とくに、首都圏でアパート経営を検討されている方にとって、建物の構造や耐用年数の違いを理解しておくことは、長期的な資産運用の成功に欠かせません。
本記事では、アパートの耐用年数の基礎知識から、年数経過後の対策まで、具体的な数字を交えながら徹底的に解説します。
これから木造アパートでの資産運用をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
耐用年数とは
アパートの収益性を考える上で、まず理解しておきたいのが「耐用年数」という考え方です。
この耐用年数には、税務上の期間を示す「法定耐用年数」と、実際の建物の寿命を示す「物理的耐用年数」、さらに経済的な観点から見た「経済的耐用年数」が存在します。
法律で決められた税務上の法定耐用年数
アパート経営において、建物は重要な固定資産となります。この固定資産の建築費は、一括で経費計上することができず、法律で定められた期間にわたって分割して計上する必要があります。
これが「減価償却」という仕組みであり、その期間を定めたものが法定耐用年数です。
ただし、この年数は会計処理のために定められた期間であり、実際の建物の使用可能期間とは異なります。
法定耐用年数は「税務上の減価償却費を計算するための基準」です。
そのため、法定耐用年数を過ぎても、適切な管理を行えば賃貸物件として十分に活用できます。
建物の寿命と法定耐用年数
実際の建物の寿命は、法定耐用年数とは別に考える必要があります。
法定耐用年数は、大規模な修繕を行わない場合の使用期間を基準に設定されているからです。
建物を長く使用するためには、計画的な大規模修繕やリフォームが欠かせません。
これは法定耐用年数に関係なく必要となる作業です。
建物が古くなると入居者の確保が難しくなる傾向があるため、定期的なメンテナンスによって建物の価値を維持することが、長期的な経営の鍵となります。
耐用年数と融資期間
アパート経営で重要な資金調達において、法定耐用年数は大きな意味を持ちます。
金融機関は、借り手が返済不能となった場合のリスクを考慮し、通常、融資期間を法定耐用年数内に設定します。
その理由は、法定耐用年数を超えた建物は金融機関の評価額がゼロとなり、債務の担保として機能しなくなるためです。
ただし、都心部など土地の価値が高い地域では、建物ではなく土地を担保とした融資を受けられる可能性もあります。
耐用年数が過ぎるデメリット
アパート経営を長期的に続けていく上で、耐用年数が過ぎた後に発生する問題点を理解しておくことは非常に重要です。
ここでは、具体的なデメリットについて解説します。
税金が高くなる
アパートの耐用年数が過ぎると、減価償却費を経費として計上できなくなるため、税負担が大きく増加します。
不動産所得に対する課税の計算式は以下の通りです。
- 不動産所得 = 収入金額 – 必要経費
収入金額には、家賃収入に加えて礼金や更新料なども含まれます。一方、必要経費には次のようなものが含まれます。
- 固定資産税
- 建物の保険料
- 修繕費
- 管理費
- 減価償却費
例えば、木造アパートの場合、築22年目と23年目で収入はほとんど変わりませんが、23年目からは減価償却費を計上できなくなります。
その結果、経費が減少し、課税対象となる所得が増えることで税負担が急増します。
ローン返済によりキャッシュフローが悪化する
アパート経営において、耐用年数を過ぎるとキャッシュフロー(実際の手残り)が悪化します。
キャッシュフローは以下の計算式で表されます。
- 手残り = 総収入 – その他の費用 – 税金 – ローン返済額
重要なポイントは、ローンの返済額は支出として発生しますが、税務上の経費として認められないという点です。
これは、借入時に収入として扱われなかったのと同じ理由です。
そのため、耐用年数が過ぎた後もローン返済が残っている場合、以下の2つの要因でキャッシュフローが大きく悪化します。
- 税金の増加
- 継続するローン返済
この状況を避けるためには、耐用年数内にローンを完済する計画を立てることが重要です。
空室が増える
賃貸物件を探す入居者の多くは、築浅物件を好む傾向があります。
そのため、アパートの築年数が進むにつれて空室率が上昇していく傾向があります。
とくに建物が古くなると、設備の古さや外観の劣化が目立ち始め、入居希望者の関心を引くことが難しくなります。
築40年から50年を超えるアパートは、若い世代を中心とした入居希望者の検討対象から外されるケースが増え、入居者の確保が著しく困難になります。
また、同じ地域に新築物件が建設されると、その影響をもろに受けて空室率が上昇するリスクも高まります。
家賃収入が低下しやすい
耐用年数を超えたアパートは、2つの要因で家賃収入が低下します。
- 空室期間の長期化による収入機会の損失
- 入居者確保のための家賃値下げ
- 周辺の新築物件との競争激化
築年数が経過するほど、周辺の新しい物件との競争力が低下するため、家賃を下げざるを得ない状況に追い込まれやすくなります。
さらに、空室期間が長期化すると、維持費用の負担も重くのしかかってきます。
修繕費用が増える
建物の老朽化は、構造に関係なく必ず発生する問題です。
耐用年数を超えたアパートでは、以下のような修繕費用が増加し、経営を圧迫します。
- 外壁・屋根材の交換(築30~40年で必要)
- 水回り設備の修理・交換
- 電気設備の更新
- 共用部分の補修・改修
とくに外壁や屋根材の交換は、多額の費用を要する大規模修繕となるため、計画的な資金準備が必要です。
また、突発的な設備の故障や補修も増えてくるため、予期せぬ出費も覚悟しなければなりません。
売却が難しくなる
耐用年数を超えたアパートは、以下の理由から売却が困難になります。
- 将来的な修繕費用の増加リスク
- 収益性の低下
- 解体費用の発生
- 金融機関の融資制限
不動産投資家の多くは、経年劣化による将来的なコスト増を懸念し、購入を避ける傾向があります。
加えて、金融機関も融資に慎重になるため、買い手の選択肢が限られてしまいます。
また、たとえ土地の資産価値が高い場合でも、建物の解体費用が売却価格から差し引かれるため、オーナーの期待する価格での売却が難しくなります。
売却時期が遅くなればなるほど、この傾向は強まっていきます。
法定耐用年数を超えたときの対処法
耐用年数を超えたアパートの経営は、さまざまな課題に直面します。
しかし、適切な対策を講じることで、資産価値を維持したり、新たな展開を図ったりすることが可能です。
ここでは、具体的な対処法について解説します。
アパートを建て替える
建て替えは、以下のような条件が整っている場合に有効な選択肢となります。
- 立地条件が良く、安定した入居需要が見込める
- アパートローンの完済が完了している
- 十分な自己資金がある
- 長期的な経営継続の意思がある
ただし、建て替えを実施する際は、現在の入居者への対応も重要な課題となります。
多くの場合、立ち退き料の支払いが必要となり、その金額は家賃の数か月分に及ぶことも珍しくありません。
また、建て替えに関する資金調達や工事期間中の収入減少なども考慮に入れる必要があります。
このような課題に対しては、専門家である不動産会社や金融機関に早めに相談し、綿密な計画を立てることをおすすめします。
アパートを売却する
建物の価値がゼロに近くなっても、土地に十分な価値があれば、売却は有効な選択肢となります。
売却を検討する際のポイントは以下の通りです。
- 法定耐用年数超過前の売却が理想的
- 土地の評価額を重視した価格設定
- 入居者付きでの売却も検討
とくに入居者が付いている状態での売却は、購入者にとって即座に収入が見込めるメリットがあります。
そのため、投資用不動産として購入を検討する買い手が見つかりやすくなる可能性があります。
アパートを取り壊して更地として売却する
更地にしての売却には、以下のようなメリットがあります。
- 建物の修繕費負担からの解放
- 土地活用の自由度が高まる
- 購入者の選択肢が広がる(マンション用地、駐車場など)
ただし、この選択肢を取る場合は解体費用が必要となります。
解体費用は建物の規模や構造によって異なりますが、相当額の支出を覚悟しなければなりません。
また、更地にすることで固定資産税の軽減措置が受けられなくなる可能性もあるため、税務面での影響も考慮する必要があります。
耐用年数を過ぎたアパートで収益を増やすには?
耐用年数を過ぎても収益性の高いアパート経営を実現するためには、計画的な対策が必要です。
ここでは、具体的な収益確保の方法について解説します。
資産価値向上のために修繕を行う
建物の資産価値を高めるための「大規模修繕」は、耐用年数を過ぎたアパートの収益性を回復させる有効な手段です。
大規模修繕には、以下のようなメリットがあります。
- 修繕費用の減価償却が可能
- 入居率の向上
- 家賃収入の増加
- 建物の寿命延長
ただし、ここで重要なのは「資産価値向上のための大規模修繕」と「通常の修繕費」を明確に区別することです。
「資本的支出は建物の耐久性を高めるもの(例: 屋根材の交換)であり、減価償却の対象。一方、通常の修繕費(例: 壊れた設備の修理)は全額を経費計上できる」
資本的支出として認められるためには、一定の要件を満たす必要があります。そのため、工事を計画する際は、税理士や不動産の専門家に相談することをおすすめします。
借入金ローンの返済期間を耐用年数以内にする
アパート経営の収益性を維持するためには、ローンの返済計画が重要な鍵となります。
具体的には、以下の2点に注意が必要です。
- 年間のローン返済額を減価償却費以内に抑える
- 返済期間を耐用年数内に収める
これは、減価償却費とローン返済額が以下のような特徴を持つためです。
- 減価償却費:実際の支出を伴わないが、節税効果がある
- ローン返済額:実際の支出を伴うが、節税効果がない
理想的なのは、年間の減価償却費とローン返済額を同程度に設定することです。
そうすることで、税引き後の利益と実際の支出を相殺し、キャッシュフローの悪化を最小限に抑えることができます。
また、耐用年数を超えてからのローン返済は、減価償却による節税効果が得られないため、手元資金を大きく圧迫する原因となります。
そのため、耐用年数内でのローン完済を目指すことが、長期的な収益確保のポイントとなります。
10年後、20年後を見据えた耐用年数対策で安定経営を実現
アパートの耐用年数は、長期的な経営戦略を立てる上で避けて通れない重要な要素です。
木造アパートの場合、法定耐用年数の22年を超えると、税負担の増加や空室率の上昇、修繕費用の増加など、さまざまな課題に直面します。
しかし、これらの課題に対して適切な対策を講じることで、耐用年数を超えても安定した収益を確保することが可能です。
そのためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 計画的な資産価値向上のための大規模修繕
- 耐用年数内でのローン完済を目指した資金計画
- 将来的な建て替えや売却を視野に入れた出口戦略
とくに首都圏では、土地の資産価値が高いため、適切な建物管理と経営戦略の組み合わせによって、長期的な資産形成が期待できます。
資金計画や物件の維持管理など、さまざまな観点から総合的に検討し、10年後、20年後を見据えた経営計画を立てることで、耐用年数という壁を乗り越えることができるでしょう。
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