アパート経営に関する相続の手続きとは?相続の注意点など徹底解説
親などがアパート経営をしていた場合、親が亡くなったら当然アパートも遺産相続の対象となります。
アパートの経営に関する手続きにはどんなものがあるのか知らない方も多いでしょう。
今回は、アパート経営に関する相続の手続きや注意点などアパート経営と相続について徹底解説をしていきます。
アパート経営を相続する可能性のある方はもちろん、親など今アパート経営をしている方もぜひ最後までご覧ください。
Contents
相続税とは
まずは、相続税について知っておきましょう。
相続税とは、亡くなった方から土地や現金などの財産を相続する際に相続するものにかかる税金です。
相続税は国に支払います。
相続する財産の金額によって、納税額も変動します。
1円でも相続する財産があればすべてに相続税がかかるわけではなく、相続財産が3,600万円を超えた場合に相続税の支払いが必要になる可能性が発生します。
この3,600万円の控除金額は、相続人の人数などによっても変動します。
法定相続人が1人であれば3,600万円で、2人であれば4,200万円と法定相続人が1人増えるごとに600万円の控除額が上乗せされます。
他にも亡くなった方の配偶者の場合や、相続人が未成年や障がい者の場合は3,600万円以上の相続であっても相続税がかからないかもしれません。
そのためほとんどの方が、相続税の支払いを行いません。
平成29年度を例にとっても、発生した遺産相続案件のうち、相続税が発生したのは8%程度です。
ただ、この記事でご紹介するようなアパートを相続するのであれば、相続税が発生する可能性は十分にあります。
相続税の支払期限は、相続する財産の持ち主が亡くなったと知った日から10か月以内です。
基本的に支払期限の延長はできませんが以下の5つの場合は2ヶ月程度の延長が可能です。
◆支払期限の延長が可能な場合◆
- 東日本大震災などの国指定の災害が起きた場合
- 相続人の移動があった場合
- 遺留分侵害額の申請が認められた場合
- あとから遺言書が見つかった場合
- 子どもが生まれた場合
ただし、国指定の災害に関しては規模によって2か月以上の延長が認められる場合もあります。
正当な理由もなく相続税の支払期限が過ぎてしまった際には3つのペナルティが課せられる可能性があります。
◆相続税の支払期限が過ぎてしまった際の3つのペナルティ◆
- 無申告加算税(50万以下で15%・50万円以上で20%の上乗せ)
- 延滞税(期限から2か月以内は年7.3%・期限から2か月以上は年14.6%)
- 重加算税(意図的に少なく申告した場合35%・意図的に逃げようとした場合40%)
相続税などの税金類は期限を過ぎてしまったり、支払いを逃れようとしたりすればかなり重いペナルティが科されます。
税金の支払いからは基本的に逃げられません。
しっかりと支払うようにしましょう。
以下の記事では、節税対策や相続税のメリットも紹介しております。アパート経営を行うにあたって確認しておくべき情報が満載ですので、ぜひあわせてご覧ください。
アパート経営とは?基本的な知識や概要について徹底解説!
アパート経営の相続手続きのステップ
それでは、アパート経営の相続手続きの5ステップをご紹介します。
◆アパート経営の相続手続きの5ステップ◆
- 遺言書の有無の確認
- 不動産調査
- 遺産分割協議
- 登記申請
- 相続税の支払い
ステップ2やステップ5のタイミングで、アパート経営特有の手続きなども出てくるので注意しましょう。
1,遺言書の有無の確認
まずは遺言書の有無を確認しましょう。
仮に家の中で遺言書を見つけたとしても、すぐに開封してしまえば無効になってしまうため必ず家庭裁判所へ行き、正しい手続きで開封してください。
遺言書に時効は存在しないため、もし遺産を分け終わったあとでも遺言書が発見されればもう一度相続のやり直しが必要です。
遺産分割協議を行う前に、本当に遺言書はないのかしっかりと確認しましょう。
2,不動産調査
アパートなどの不動産が遺産として相続対象になった場合、アパートの権利関係を調べましょう。
亡くなった方1人だけの単独所有であれば、そのまま遺産分割協議を行って問題ありません。
しかし、誰かとの共有財産の場合、そのまま共有財産の状態で相続します。
不動産調査は法務局で登記簿謄本を取得すれば利権関係を調べられます。
3,遺産分割協議
遺産分割協議は相続人全員が集まり、遺産をどのように分けるのか話し合います。
遺言書があれば遺言書に沿った分割を行い、遺言書がない場合は遺産分割協議書を作成して、誰に何をどれくらい相続するのかを決めます。。
相続人全員の同意が得られれば、遺産分割協議はが終了です。
4,相続税の支払い
自分が相続する分の遺産が遺産分割協議で決まれば、相続税申告書を提出します。
ただし先程も触れた通り、相続する遺産が控除額以内であれば相続税申告書の提出は不要です。
相続税申告書の作成は自分で行っても問題ありませんが、ややこしく難しいと感じるのであれば税理士などに相談しても良いでしょう。
相続税申告書の提出ができれば、相続税を納めます。
ここで注意すべきは、納付書は役所や税務署から届かないので自分で税務署に取りに行く必要があります。
5,登記申請
相続税を支払い、相続が確定すればアパートの相続登記を行いましょう。
相続登記は法務局でアパートの名義変更の申請を行います。
相続登記には期限がありませんが、今後の手続きに関わるため早急に申請を行ったほうが良いでしょう。
相続登記は書類の準備など複雑なものが多いですが、自分で申請を行うのも可能です。
しかし、はじめての相続登記の申請なのであれば司法書士や行政書士に相談できます。
また先程、相続登記に期限がないと記載しましたが、2024年を目安に相続登記が義務化されます。
所有権を認識した時点から3年以内に登記を行わなければ10万円以下の過料が科されるので注意しましょう。
アパート経営で相続税対策をするメリット
アパート経営は相続税対策としてもメリットがあります。
◆アパート経営での相続税対策のメリット◆
- 相続税評価額が低くなる
- 借入金
- 小規模住宅用地の減額特例
アパートを相続するのであればこちらは知っておいたほうが良いでしょう。
メリット1:相続税評価額が低くなる
現金を相続する際には相続税評価額と額面金額にとくに差はありません。
しかし、アパートなどの収益が得られる遺産に関しては実際の金額よりも相続税評価額が低くなります。
相続税評価額は一定のルールが有りますが、実際は金額の大体30〜50%となります。
相続税評価額の仕組みや計算式についてはのちほど、より詳しくご紹介していくのでそちらも併せてご覧ください。
メリット2:借入金
借入金とは金融会社から借りるローンです。
ローンといえば、借金でありいいイメージがないかもしれませんが相続税に関してはメリットになります。
債務控除と言い、借入金などの債務残高はマイナスの財産のため現金などのプラスの財産から差し引いて計算できます。
そのため、相続税に関しては借入金はメリットになると知っておきましょう。
メリット3:小規模住宅用地の減額特例
アパートの大きさや一定の条件を満たせば小規模住宅用地の特例が受けられます。
小規模住宅用地の特例が受けられれば、最大80%の減額ができます。
アパート経営をしているなど貸付事業用の宅地であれば200㎡までの相続税評価額を50%減額が可能です。
こちらの特例は残された家族の生活保障として相続税の負担を減らすための制度です。
アパートで相続税評価額が下がる仕組みと計算式
それでは、アパートで相続税評価額が下がる仕組みや計算式についてご紹介します。
相続税評価額はアパートの土地部分と建物部分に分けて評価されます。
土地部分は住宅が建っている敷地を自用地、今回紹介するアパートなどの賃貸物件が建っている敷地を貸家建付地と言い、貸家建付地の相続税評価額の計算は以下の通りです。
自用地としての価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)=貸家建付地の相続税評価額
自用地の価額は国税庁が1年に1度公表している1㎡あたりの評価額を公表しています。
国税庁のホームページで確認してみましょう。
建物部分は建物の固定資産税評価額が基本となる以下の計算で建物評価額をは出します。
建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合(30%)×賃貸割合)=建物評価額
建物の固定資産税評価額は新築であれば請負工事金額の50〜60%程度です。
「現金で相続した場合vsアパート(不動産)で相続した場合」比較シミュレーション
それでは実際に現金で相続した場合とアパートで相続した場合を計算し、比較してみましょう。
前提条件として、現金は1億円を相続、アパートは1億円(土地5,000万円と建物5,000万円)とそれぞれ1人で相続すると仮定します。
まずは現金の場合相続税は1億円から基礎控除額(3,600万円)を差し引いた6,400万円だけに相続想像税がかかります。
ここへ1億円以下の相続税率である40%をかけて、控除額である700万円を差し引いた金額1,860万円が相続税です。
アパートの場合、土地5,000万円に借地権割合や借家権割合、賃貸割合をかけたものを
差し引くと3,950万円です。
建物5,000万円から借家権割合や賃貸割合をかけたものを差し引くと3,500万円、土地と建物を足すと7,450万円になります。
ここから基礎控除額の差し引きなど相続税の計算を行うとアパートの場合の相続税の支払いは570万円です。
現金を相続すれば相続税は1,860万円、アパートを相続すれば相続税は570万円です。
どちらがお得かは一目瞭然ですよね。
アパート経営で相続税対策をする時の注意点
先程の比較シミュレーションでアパート経営がどれほどの相続税対策になるかわかっていただけたでしょう。
しかし、何も考えずに相続税対策のためにアパート経営を始めるのは危険です。
アパート経営で相続税対策をする際の注意点は主に4つあります。
◆アパート経営で相続税対策をする際の注意点4点◆
- 質の良いアパートを建てる
- 遺産分割方法
- 土地はローンを組まない
- 一部税金負担は増える
それではそれぞれ詳しくご紹介します。
注意点1,質の良いアパートを建てる
アパートの空室は相続税に関わるため、空室をできるだけ作らないように、質の良いアパートを建てるようにしましょう。
アパートの相続税の計算式には賃貸割合がありますが、こちらは部屋数に対してどれくらいの入居者がいるかといった割合です。
空室が多ければ、賃貸割合が低くなり支払うべき相続税の金額が高くなってしまいます。
アパートの経営も上手く回らなくなってしまう可能性もあるので、人が住みたいと思うようなアパートを建てるようにしてください。
注意点2,遺産分割方法
相続人が1人であれば問題ありませんが、現金とは違い分割しにくいアパートなどの不動産はどのように遺産分割をするか揉めてしまう可能性があります。
共有名義にする方法もありますが、経営方針などのちのトラブルになる可能性があるため避けたほうが良いでしょう。
あらかじめどのように遺産分割をするのか考えておく必要があります。
注意点3,土地はローンを組まない
アパートを購入する際にローンを組む場合は多いですが、その時に同時に土地を購入するのであれば、土地代はローンを組まないようにしましょう。
アパートの建物代程度のローンであればアパート経営で返済が可能です。
しかし、土地代も含めたローンの金額を返済できるほど家賃収入を得るのは少し、難しいでしょう。
相続税対策をする前に、アパート経営が成り立たなくなる可能性があります。
土地が安い地域もありますが、その分駅から遠かったり立地が悪かったりして空室が増えてしまう可能性が高いです。
そのため、できるだけ土地は現金で購入するようにしましょう。
注意点4,一部税金負担は増える
アパートは現金で相続するよりも相続税は抑えられます。
しかし家賃収入などで収入は増えるため、所得税や住民税など収入で変動する税金負担は増える可能性が高いです。
また、アパートには固定資産税が掛かるため、いままでは支払う必要のなかった税金の支払義務が出てきます。
相続税が抑えられる反面、一部の税金負担は増えると知っておきましょう。
アパート経営の相続で相続人に迷惑をかけないためのコツ
相続人に相続税の負担をかけたくないからとアパート経営を始めても、もしかしたらアパート経営が相続人に迷惑をかけてしまうこともあるかもしれません。そうならないためのコツがは2つほどあります。
◆アパート経営で相続人に迷惑をかけないためのコツ2点◆
- 相続方法
- アパート経営の法人化
それでは詳しくご紹介します。
コツ1,相続方法
注意点でもお伝えしましたが、現金のように簡単に分割できないアパートなどの不動産は相続人が複数いた際にどのように分けるかが問題になります。
誰か1人がアパートを相続した場合、他の相続人にがアパートの価値と同額程度の現金などがあを用意できればいいですが、ない場合は不平等だとトラブルに発展します。
どのように相続をするのかや、遺言書を作成するなど相続人がもめないようにするための対策が必要です。
コツ2,アパート経営の法人化
複数の相続人が存在し、アパートの価値と同額程度の遺産がない場合は法人化を検討してみましょう。
株式の分割といった方法での共有経営は株式を明確な数字で分配するためトラブルが起きにくいです。
ただし、法人化をすると個人経営では必要なかった帳簿や経費申請など書類作成義務が出てくる点はデメリットでしょう。
アパートを相続したらまずやること
アパートを相続し、相続税の支払いまで終わればアパートは相続人のものとなります。
アパートを相続したらこれから紹介する4つを決して忘れてはいけません。
◆アパートを相続した際の忘れてはいけない4つのポイント◆
- 賃借人への連絡
- 準確定申告
- アパートに関する今後の対応
- 金融機関への連絡
それでは詳しく見ていきましょう。
1⃣賃借人への連絡
アパートの名義変更を行ったら賃借人へすぐに連絡しましょう。
もともとの持ち主が亡くなると銀行口座が凍結してしまうため、家賃の振り込みなどができなくなります。
また、賃借人との信用関係は大切です。
安心して住み続けてもらうためにも、アパートの持ち主(名義変更)を行った際には必ず連絡しましょう。
2⃣準確定申告
準確定申告とは被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなった日までの確定申告を指します。
前年の所得を2月16日〜3月15日までに申告する確定申告とは別のものになります。
準確定申告の期限は相続が始まったと知った日の翌日から4か月以内です。
忘れてしまうと、無申告加算税や延滞税、重加算税を課される可能性があるので注意してください。
3⃣アパートに関する今後の対応
アパートを相続したからといって、必ずアパート経営をする必要はありません。
ローンの残債や経営状態などを加味してアパートに関する今後の対応を決めましょう。
ローンの残債が多かったり、経営状態がよくなかったりした場合は売却して手放すのも一つの方法です。
4⃣金融機関への連絡
ローンの残債が残っていれば、ローンを組んでいる金融機関へ名義変更などの連絡を必ず入れましょう。
基本的に多くは、アパートを相続した人方がそのままローンも引き継ぐ場合が多いと思います。
きちんと金融機関へ名義変更などの連絡をせず、金融機関の承諾を得ないままにしていると相続人全員に法定相続分に応じた債務の支払義務が発生します。
また、金融機関としては新しくローンの返済をしてくれる方にきちんと返済能力があるか審査をする必要があるため、必ず債務引受の契約を結びましょう。
相続発生によって親のアパート経営を引き継ぎしたときの注意点
アパートの経営を引き継いだ際には、賃借人や金融機関など必ず各所に引き継ぎをした旨を連絡しましょう。
被相続人がアパートのローンを組んだ際に保証人になっていた場合、相続が発生しても保証人になった事実は消えません。
アパートを相続しなかったり、相続放棄をしたりした場合でも保証人である事実は変わりませんので注意してください。
アパート経営における税務調査の注意点
アパート経営をするにあたり、気を付けなければいけない税金のポイントがあります。
こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
アパート経営の相続についてはいろいろと注意が必要
いかがでしたか?
今回は、アパート経営に関する相続の手続きや注意点などアパート経営と相続について徹底解説をしました。
アパート経営は相続税対策として、始める場合もありますが実際に相続を行う際には分割方法などトラブルを避けるためには遺言書を用意するなど事前準備をしておきましょう。
また、相続手続きについても相続税の手続き以外にアパートの名義変更に関する手続きなども必要となるため、ややこしいです。
もしわからない点などあれば、迷わず行政書士や不動産会社など専門家の力を借りるようにしましょう。
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