公務員が賃貸経営で家賃収入を得るには?条件や注意点を紹介
副業の人気が高まるなかで「公務員でも給与だけでは将来が不安だ」「賃貸経営で副収入を得たい」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
公務員は、原則として副業や兼業が禁止されていますが、条件を満たせば賃貸経営による家賃収入を得ることができます。
そこで本記事では、公務員が家賃収入を得るための条件や注意点をご紹介します。
賃貸経営を検討している公務員の方は、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
公務員でも賃貸経営できる?
公務員として勤務しながら賃貸経営を行うには、国家または地方公務員法、人事院規則に定められた条件を満たさなければなりません。
人事院規則とは、公務員の定年や身分保障など、さまざまなルールを定めたものです。
反対に条件を満たしていない状態で賃貸経営を行うと、減給や懲戒免職のおそれがあります。
公務員は、国民の税金から給与が支払われている立場上、一般企業の社員よりも厳しくルールが設けられているのです。
一人の公務員が規定を破れば、公務員全体や所属している自治体の信用を失うことになりかねません。
定められた禁止事項に該当することがないように、公務員の副業に関する法律の内容をしっかりと把握しておきましょう。
公務員の副業を禁止する法律
公務員は、国家公務員法や地方公務員法によって原則として副業が禁止されています。
公務員の副業に関する具体的な条文は、以下の3つです。
公務員の副業に関する条文
- 私企業からの隔離(国家公務員法 第103条)
- 他の事業又は事務の関与制限(国家公務員法 第104条)
- 営利企業への従事等の制限(地方公務員法 第38条)
安心して家賃収入を得るためにも、条文の内容を適切に理解して、条件や注意事項を読み取りましょう。
参照元:文部科学省 国家公務員
私企業からの隔離(国家公務員法 第103条)
国家公務員法 第103条では、以下の内容で公務員が民間企業に携わることを禁止しています。
職員は、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下営利企業という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
引用元:文部科学省 国家公務員
具体的には、報酬の有無を問わず、公務員は営利目的の企業を運営することができないということです。
財産上の利益を図ることが目的であれば、賃貸経営はできませんが、条件の範囲内であれば副業には該当しないため、家賃収入を得ることができます。
他の事業又は事務の関与制限(国家公務員法 第104条)
公務員は、国家公務員法 第104条によって、営利を目的とする企業以外でも、報酬を得ての役員の兼務や、事業に取り組むことができません。
職員が報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、その他いかなる事業に従事し、若しくは事務を行うにも、内閣総理大臣及びその職員の所轄庁の長の許可を要する。
引用元:文部科学省 国家公務員
基本的に、公務員による目的を問わない副業は、内閣総理大臣や所轄庁の長の承認を得る必要があります。
営利企業への従事等の制限(地方公務員法 第38条)
地方公務員もまた、地方公務員法 第38条によって営利団体の役員を兼務したり、事業に取り組んだりすることを禁止されています。
くわえて、自分で営利目的の企業を立ち上げて運営することもできません。
国家公務員法の第103条の全文は、以下でご確認ください。
職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
引用元:文部科学省 国家公務員
ただし、地方公務員に限っては、任命権者の許可を得ることができれば、営利を目的とする副業が可能です。
なお、2019年4月に実施された「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する実態調査」の結果報告のなかで、その他の兼業として“不動産の賃貸”を公表しています。
地方公務員が、賃貸経営で家賃収入を得ている前例があるのは心強いですね。
副業禁止の背景にある公務員の義務
公務員の副業を禁止されている背景には、国家公務員法による義務が関係しています。
公務員に課せられた義務のなかでも、副業の禁止を裏づけるのは国家公務員法の第101条で定められている、“職務に専念する義務”です。
公務員は、勤務時間および職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、政府がなすべき職務にのみ従事しなければなりません。
副業によって、本業に支障をきたしては本末転倒だということです。
ほかにも、信用失墜の禁止、秘密を守る義務があります。
副業を行うことによって、情報漏洩や自治体の信用失墜につながれば、これらの義務を果たすことができなくなってしまうわけです。
公務員は、国民のために奉仕し、社会の土台を創り上げる担い手であるがゆえに、国や地方自治体を揺るがす秘密を守るといった責任や義務が重く課せられています。
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公務員が家賃収入を得るうえでの条件・基準
公務員の副業や兼務が禁止されている以上、事業とみなされる条件に該当することがないように、賃貸経営を行う必要があります。
これから紹介する3つの条件を守れば、事業とみなされずに、本業の給与に合わせて家賃収入を受け取ることが可能です。
なお、条件については、公務員の就業規則にあたる人事院規則に記載されています。
賃貸経営が事業とならない条件
- 規模を5棟10室未満に留める
- 家賃収入を500万円未満に抑える
- 管理業務を管理会社に委託する
つまり、賃貸経営の規模や家賃収入額、管理形態を事業にならない範囲内で実施することが求められているのです。
それぞれ詳しく解説します。
規模
賃貸経営が事業とみなされる条件の一つとして、家賃収入を得る規模が挙げられます。
人事院規則14-8によると、独立した家屋の場合は5棟未満、アパートやマンションなどの区画された部屋の場合は、10室未満であれば事業を営んでいるとはみなされません。
言い換えれば、賃貸経営を行う規模が4棟9部屋以下であれば、事業に該当する範囲外で賃貸経営を実施することができるということです。
収入額
家賃収入額もまた、賃貸経営が事業とみなされる条件の一つです。
人事院規則14-8によれば、年間500万円以上の家賃収入を得ると、営利を目的とした経営とみなされてしまいます。
たとえ経理上のミスであったとしても、家賃収入額が年間で500万円を超えてしまうと、公務員法に違反したことになりますので注意してください。
年間の家賃収入額が500万円を超えないためのポイントは、なんといっても家賃設定です。
たとえば、1か月の家賃が8万円の部屋を6室経営すると、1年間(12か月)の家賃収入額は576万円と限度額を超えるため、家賃を下げるか部屋数を減らすことになります。
ただし、やみくもに家賃を下げると費用だけがかさみ、経営が苦しくなる可能性があるため、収入・支出のバランスが取れた物件を探すことが求められます。
管理形態
公務員は本業に専念する義務があるため、賃貸経営において自身が管理業務を行うことができません。
人事院規則14-8では、不動産に関する維持管理業務を事業者に委ねることが義務づけられています。
管理会社に委託すれば、物件管理に関わるすべての業務を依頼することが可能です。
そもそも、賃貸経営の管理業務には、入居者の募集や家賃の回収、建物のメンテナンスなどの多様な業務が含まれており、専任でなければこなすことは困難です。
また物件管理を自身で行うと、クレーム対応をはじめとする急なトラブル時に駆けつけなければなりません。
賃貸の管理業務は専門知識も要するため、公務員に限らず管理会社に委託するオーナーが多い傾向にあります。
管理会社に委託したとしても、定期的に経営先の物件に足を運んで管理状態をこまめにチェックし、入居者に安心・快適な住まいを提供しましょう。
公務員が賃貸経営を始める際の準備
公務員が賃貸経営を始める際は、事前に職場の上長や責任者に相談したのち、申請手続きを進めます。
また、国家公務員法や地方公務員法、人事院規則で定められている条件の範囲を超えた賃貸経営を行う場合は、必ず申請して許可を得なければなりません。
条件の範囲を超えていても、やむを得ない理由で不動産投資を行う場合は、承認をもらえる可能性があります。
たとえば、不動産を相続することになったり、転勤や引っ越しなどで空き家になる持ち家のローンを返済するために他人に家を貸したりするケースです。
申請に必要な書類を以下の表にまとめましたので、ご参考になさってください。
賃貸経営における公務員の提出書類
書類名 | 詳細 |
自営兼業承認申請書(不動産等賃貸関係) | 国家公務員が副業を申請する書類 |
不動産管理の委託契約書 | 管理業務を管理会社へ委託する際の契約書 |
物件概要書 | 賃貸経営する物件の住所や価格、面積、建物の構造などが記載されている |
貸借条件一覧表 | 賃貸経営する物件各室の賃貸条件が明記されている |
これらの書類を所属する省庁や役所に提出しますが、地域によって必要な書類は異なる場合があります。
円滑に申請手続きを行うためにも、事前に所属部署に相談し、申請書の様式や許可に関する条件などを確認しましょう。
賃貸経営の規模が変更になった際や異動時には、その都度申請します。
申請を出せば必ず承認されるわけではありませんが、時代の流れに伴って、公務員の副業に関する規制は緩和されている傾向がみられます。
本業に支障がないことを理解してもらえれば、承認を得られる可能性は大いにありますので、適切に申請手続きを行いましょう。
公務員が賃貸経営を行うことの利点
諸条件はあるものの、賃貸経営による家賃収入は、公務員向きの副収入といえます。
ここからは、公務員が賃貸経営で家賃収入を得ることの利点をお伝えします。
審査に通過しやすい
自治体や国家から身分を保障されている公務員は、社会的な信用があることから、不動産投資する際のアパートローンの審査に通過しやすい傾向にあります。
通常、不動産投資するアパートやマンション、戸建てなどの建物を購入する際に利用する投資ローンは、金融機関の審査を受けなければなりません。
審査において金融機関が重視するのは、年収や勤続年数、貯金額、個人の属性などの情報です。
賃貸経営を行ううえでポイントとなる資金調達において、ローンの審査に通りやすいことは大きな利点です。
金利を抑えられる
民間企業とは異なり、倒産やリストラのリスクがほとんどない公務員は、低金利で融資を受けやすい職業です。
ローンの審査が通りやすく、低金利で融資を受けることができれば、少額の資金で賃貸経営を始められ、かつローンの負担を低減することが可能です。
ただし、融資の基準や条件、限度額などは金融機関ごとに異なり、担当者によってもある程度左右されます。
たとえば、都市銀行は条件さえ満たせば融資を受けやすいものの、地方銀行や信用金庫、信用組合のなかには地元の人や不動産にのみ融資を行うところもあります。
ローンの審査も通りやすいうえに、低金利・有利な条件で融資を受けられる可能性があることから、公務員は不動産投資に向いている職業といえるでしょう。
公務員が家賃収入を得るうえでの注意点
公務員が家賃収入を得るうえで気に留める点は、規則だけではありません。
以下でご紹介する注意点をしっかり押さえて、対策することが肝心です。
高額の物件は避ける
不動産の知識や実践の経験値がない方であればなおさら、5,000万円以上の一棟マンションのような高額な物件を購入するのは避けることをおすすめします。
公務員は融資の審査が通りやすいため、高額な物件を勧められる傾向がありますが、高額な物件が必ずしも多くの利益を出せるとは限りません。
不動産会社のなかには、不動産初心者には不向きな高額物件を紹介してくる業者も存在します。
たとえば、一見利回りが良さそうな物件を、リスクを鑑みることなく紹介されるケースです。
売買価格のパーセンテージで収入が決まる不動産会社にとって高額物件は、より高い手数料を得ることにつながります。
失敗したと気づいてから売却活動を行ったとしても、購入した価格の半分程度の査定しかでないこともあります。
5,000万円以上の融資を受けている状態で、空室による赤字が発生すれば、マイナス分を負担しなければならず、自己破産する可能性もゼロではないのです。
ただし、安価な物件なら何でもよいというわけではありません。
営業担当者の言葉をそのまま信じ込まずに、本当に価値のある物件なのかを、ご自身で冷静に判断することが成果をあげる近道です。
リスクを理解する
賃貸経営には、さまざまなリスクがつきものです。
リスクを考慮して事前にしっかり対策をとっておきましょう。
たとえば、地震や台風などの自然災害により、経営している物件が被害を受ける可能性です。
対処として、国土交通省が発表しているハザードマップを活用すれば、物件を選定したり、
火災・地震保険に加入したりすることができます。
ほかにも、空室率の上昇による家賃収入の減少やローンの金利が上昇するケースが挙げられます。
これらのリスクに柔軟に対処するためにも、自己資金には常に余裕をもっておきましょう。
キャッシュフローをこまめに確認し、手元に一定額の現金を残しておけば、万が一の出費でも安心です。
確定申告を行う
家賃収入を得た際に忘れてはならないのが、確定申告を行う可能性がある点です。
通常、公務員は年末調整を行うため、確定申告は不要ですが、年間の家賃収入額が20万円を超える場合は、賃貸経営を開始した翌年から確定申告を行う必要があります。
確定申告する期間は2月16日から3月15日なので、この間に税務署またはオンライン上で申告を済ませましょう。
確定申告の主な流れは以下の通りです。
確定申告の主な流れ
- 毎月帳簿をつける
- 帳簿の証明になる領収書などを保管しておく
- 確定申告の書類に必要事項を記入する
- 期間内に必要書類を提出する
確定申告が完了すると、5~6月頃に所得税の納付書が届きますので、忘れずに所得税を支払いましょう。
なお、仮に賃貸経営における収支が赤字であっても、公務員としての給与所得から差し引いて税金を減らすことができます。
黒字の場合は、確定申告のなかでも“青色申告”を行うことによって、家賃収入から最大65万円の特別控除を受けられ、節税することが可能です。
【関連記事】公務員は不動産投資が向いている?その理由と注意点やよくある失敗
公務員が家賃収入を得る際は、人事院規則に定められている範囲内で賃貸経営を行いましょう
今回は、公務員が家賃収入を得るための条件や注意点をお伝えしました。
公務員は、職務に専念する義務があるため、副業が制限されています。
そのため、規模を5棟10室未満に留めることや、家賃収入額を500万円未満に抑えることなど、人事院規則に定められている範囲内で賃貸経営を行いましょう。
なお、これらの条件の範囲外でも、所属部署の責任者に承認を得ることができれば、賃貸経営を行うことが可能です。
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