アパート経営の確定申告で経費になる項目・ならない項目は?必要書類も解説
「アパート経営を始めたけど確定申告は必要?」「アパート経営で生じた所得は事業所得、それとも不動産所得?」などの疑問を抱いていませんか。
専門的な知識が必要になるため、混乱している方が多いでしょう。
とはいえ、適当に手続きを済ませることはおすすめできません。申告漏れなどでペナルティを科される恐れがあるからです。
この記事では、アパート経営で押さえておきたい確定申告のポイントを解説しています。
以下の情報を参考にすれば、確定申告が必要になるケース、必要経費として計上できる費用などがわかります。
確定申告の準備を進めたい方は、参考にしてください。
Contents
アパート経営は不動産所得?事業所得?
確定申告は、1年間の所得と所得にかかる税金を計算して、納めるべき税額を税務署に申告する手続きです。
所得は、不動産所得・事業所得・給与所得・配当所得など、10種類にわかれます。アパート経営で生じた所得は、不動産所得と事業所得のどちらに分類されるのでしょうか。
基本的には不動産所得
土地や建物など、不動産の貸し付けで生じた所得は不動産所得に該当します。
したがって、アパート経営で生じた所得は、基本的に不動産所得に分類されます。不動産所得の計算方法は次の通りです。
不動産所得=総収入金額-必要経費
事業所得・雑所得に該当する場合もある
ただし、不動産の貸し付けで生じた所得の中には、事業所得や雑所得に分類されるものもあります。
具体的には、食事を提供する下宿から得た所得は事業所得・雑所得、従業員宿舎から得た所得は事業所得に分類されます。
ちなみに、事業所得は、製造業・小売業・卸業・農業・漁業などの事業から生じた所得です。
事業的規模でアパート経営を営んでいる場合も不動産所得
アパートなどを、おおむね10室以上、経営している場合、事業的規模と判断される可能性があります。
事業的規模に該当するとアパート経営で生じた所得は事業所得に分類されると考える方が少なくありません。
しかし実際は、不動産所得に分類されます。事業的規模はあくまでも事業の規模を表すものであるため、所得の分類に変化は生じません。
アパート経営で確定申告が必要な人と不要な人
アパート経営で所得が生じると、基本的に確定申告が必要です。
ただし、全ての方が確定申告を行わなければならないわけではありません。
確定申告が必要になる条件と確定申告が不要になる条件は次の通りです。
確定申告が必要な人の条件
確定申告が必要になる条件は、国税庁の公式サイトに記載されています。
詳細は割愛しますが、簡単にまとめるとアパート経営で生じた不動産所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。
ポイントは、「不動産所得」となっている点でしょう。
前述の通り、不動産所得は、総収入から必要経費を減じて求めます。この金額が20万円を超えている場合は確定申告を行わなければなりません(詳しい条件は、国税庁公式サイトでご確認ください)。
ちなみに、所得税は申告納税制度を採用しています。
申告納税方式は、納税者が申告することで税額が確定し、確定した税額を納税者が自ら納付する制度です。
したがって、待っていても、税額は確定しません。確定申告を怠るとペナルティを科される恐れがあるため注意しましょう。
確定申告が不要な人の条件
不動産所得が20万円以下であれば、確定申告は不要です。
例えば、家賃収入が60万円、必要経費が50万円の場合、不動産所得は10万円であるため確定申告は不要と考えられます。
当然ながら、不動産所得が赤字の場合も確定申告は不要です。
ただし、赤字の場合は確定申告を行うことで所得税を減らせる可能性があります。
不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得は、損失と利益を相殺できる損益通算の対象だからです。
したがって、総所得金額などを計算するときに損失のうち一定のものを控除できます。
アパート経営の確定申告の際に必要経費と認められる基準
アパート経営には、さまざまな経費がかかります。
ただし、すべての経費が必要経費と認められるわけではありません。ここでは、必要経費と認められる可能性が高い一般的な基準を紹介します。
アパート経営に関わる経費
アパート経営に深く関わっている経費は、基本的に必要経費と認められます。
例えば、管理会社に支払った管理手数料、故障した設備の入れ替えにかかった修繕費などは、アパート経営に深く関わっているため必要経費に該当すると考えられます。
プライベートと切り離せない経費は家事按分
アパート経営に関わる経費の中には、プライベートと切り離せないものがあります。
代表的な例としてあげられるのが、事務所兼自宅として使用している部屋の家賃です。
このような経費は、アパート経営に関わる部分だけ必要経費として計上できます。これを家事按分といいます。
具体的な計算方法はケースで異なりますが、参考に床面積50平方メートル(家賃60,000円)、事務所として使用している部屋の面積15平方メートルの条件で必要経費を算出します。
【家事按分の方法】
- 15平方メートル/50平方メートル=30%
- 60,000円×30%=18,000円。
上記のケースでは、18,000円を必要経費として計上できる可能性があります。
アパート経営の確定申告で経費になる項目
ここからは、アパート経営で必要経費として計上できる主な項目を紹介します。
税金
固定資産税・都市計画税・不動産所得税・印紙税など、アパート経営に関わる税金は必要経費として計上できます。
勘定科目は租税公課です。
それぞれ税の種類を挙げましたが、あまり聞いたことがない名前がある方もいるのではないでしょうか?
以下の記事では、上記で紹介した固定資産税について解説しています。気になる方はぜひあわせてご覧ください。
借入金の利子
金融機関から融資を受けてアパートを購入した場合、借入金の利子は必要経費として計上できます。
勘定科目は借入金利子です。
減価償却費
アパート(建物)や設備の価値は、経年で減少します。
減少分は、減価償却費として計上できます。つまり、アパートや設備の購入にかかった費用を、数年にわけて必要経費として計上できるのです。
償却できる期間は、法定耐用年数で異なります。
ちなみに、木造アパートの法定耐用年数は22年、鉄骨造アパート(骨格材の肉厚が4mmを超えるもの)の法定耐用年数34年、RC造の法定耐用年数は47年です。
以下の記事では、アパートの構造についてそれぞれのメリット・デメリットを詳しく解説しています。気になる方はぜひあわせてご覧ください。
アパート経営は木造・鉄骨造・RC造どれがいい?それぞれのメリット・デメリット
管理会社に支払った経費
管理会社に支払った経費も、必要経費として計上できます。
具体的には、建物の管理に関わる管理手数料、入居者の管理に関わる管理手数料などが該当します。
アパートの修繕にかかった費用
原状回復にかかった経費や故障した設備の交換にかかった経費なども必要経費に含まれます。
具体的には、入居者の退去に伴う壁紙の交換、壊れたエアコンの修理などにかかった経費が該当します。
損害保険料
火災保険料・地震保険料をはじめとする損害保険料も経費として計上できます。
一括払いをした場合も、必要経費として計上できるのはその年の分だけです。
アパート経営の確定申告で経費にならない項目
アパート経営に関係しているように思えても、必要経費に計上できないものもあります。
続いて、必要経費として計上できないものを紹介します。
所得税・住民税・相続税
固定資産税・都市計画税などは必要経費として計上できますが、所得税・住民税・相続税は必要経費として計上できません。
借入金の元本部分
借入金の元本部分も必要経費として計上できません。
必要経費として計上できない理由は、借り入れたお金を返済しているだけだからです。借入時に収益として計上していないため、返済時も経費として計上できません。
資産価値・耐久性向上に関する経費
アパートの資産価値や耐久性の向上に関する経費は、資本的支出に該当するため必要経費に計上できません。
減価償却として翌年以降から複数年にわたり計上することになります。
確定申告の種類「青色申告」と「白色申告」の違い
確定申告の方法は、青色申告と白色申告に分かれます。青色申告は開業届けと青色申告承認申請書を税務署に提出した方が選択できる方法、白色申告は以上の手続きをしていない方が対象となる方法です。
最も大きな違いは帳簿の付け方といえるでしょう。白色申告は簡単な単式簿記、青色申告は複雑な複式簿記が基本的に求められます。ただし、手間のかかる青色申告には、以下のメリットがあります。
青色申告特別控除を受けられる
青色申告は、最大で65万円(e-Taxによる申告などが必要。e-Taxなどの要件を満たさない場合は最大55万円)の青色申告特別控除を受けられます。
ちなみに、青色申告を選択できるのは事業的規模でアパート経営を行っている方です。
青色事業専従者給与を必要経費にできる
青色申告者と同一生計の親族(15歳以上)で事業に従事している方を青色事業専従者といいます。
青色申告を選択して「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出した方は、青色事業専従者の給与を必要経費として計上できます。
純損失の繰越控除などを受けられる
純損失が生じた場合、翌年以降3年間にわたりこれを控除することもできます。
前年も青色申告をしている場合は、前年の所得から控除して所得税の還付を受けられます。
アパート経営の確定申告における必要書類
アパート経営の確定申告では次の書類が必要になります。
白色申告の必要書類
- 確定申告書B
- 収支内訳書
- 控除・取引を証明する書類
確定申告書B・収支内訳書のほか、控除を証明する書類が必要になります。
具体的には、社会保険料控除証明書や生命保険料控除証明書などが該当します。
取引を証明する書類も必要です。
ローンの残高証明書、賃貸契約書、家賃収入を証明する書類、固定資産税をはじめとする税金の納付書・不動産売買契約書なども用意しておく必要があります。
青色申告の必要書類
- 確定申告書B
- 青色申告決算書
- 控除・経費を証明する書類
控除・経費を証明する書類は、白色申告の必要書類で説明したものと基本的に同じです。
青色申告決算書は、帳簿の内容を決算書としてまとめた書類を指します。
アパート経営の確定申告の流れ
続いて、アパート経営における確定申告(青色申告)の流れを紹介します。
ステップ1:青色申告申請書を提出
青色申告を選択したい年の3月15日までに、納税地を管轄する税務署の署長へ青色申告申請書を提出します。
その年の1月16日以降に開業した場合は、開業日から2カ月以内に青色申告申請書を提出します。
ステップ2:必要書類を準備
帳簿をはじめ、必要な書類を準備します。
申告期限間際になって準備を始めると、間に合わない恐れがあるため早めに準備を始めることが重要です。
ステップ3:確定申告書の作成
準備した書類などをもとに、確定申告書を作成します。
確定申告書B・青色申告決算書は、国税庁公式サイトからダウンロードできます。
また、確定申告作成コーナーで作成することも可能です。不安を感じる場合は、税理士に相談してもよいでしょう。
ステップ4:確定申告書の提出
確定申告書が完成したら、申告期限までに納税地を管轄する税務署へ提出します。
提出方法は、持参・郵送・e-Taxから選べます。所得税の納付も、忘れずに行うことが重要です。
副業でアパート経営をする際の確定申告のポイント
最後に、副業でアパート経営をしている方が、確定申告で気を付けたいポイントを紹介します。
他の所得と合算
不動産所得を他の所得と合算して所得税を計算します。
したがって、不動産所得と他の所得を合算した金額に対する所得税率が適用されます。
同様の理由で、不動産所得で赤字が出た場合は、他の所得から赤字分を控除できます。
つまり、税額を抑えられる可能性があるのです。
不動産所得が20万円を超える場合は確定申告が必要
会社で年末調整を受けている方も、不動産所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。
転勤などでマイホームを賃貸に出している方も同様です。マイホームは、賃貸物件と意識されにくいため注意しましょう。
アパート経営は確定申告が必要です
アパート経営の確定申告について説明しました。不動産所得が20万円を超える場合、確定申告が必要です。
事業的規模でアパート経営を行っている方は、青色申告を選択すると青色申告特別控除などのメリットを受けられます。
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