アパートの立ち退き料はどう決まる?立ち退き料を少なくするためのコツとは
アパート経営をしていると、時には賃借人に立ち退き料をお支払いして退去をしていただかなければいけないこともあります。
たとえばアパートの老朽化に伴う建て替えであったり、賃貸人の何らかの事情による退去を依頼したりするケースがあります。いずれも賃貸人の事情によるため、賃借人に迷惑をかける代わりに立ち退き料というお金を支払うことで問題解決を図ります。
立ち退き料の基本的な知識についてお伝えします。
Contents
アパート立ち退き料とは
入居者に退去をお願いする場合には、一般的に正当事由がなければ賃貸人から賃貸借契約の解約はできません。
ただし賃貸人にも建て替えや修繕工事など致し方がない理由によって入居者である賃借人に退去をお願いせざるを得ない状況もあります。
そうなった場合に立ち退き料の支払いを正当事由にして、賃貸借契約を解約して退去してもらうといったことが考えられます。
以下の記事では、アパートの建て替えするタイミングについて解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
アパートはどのタイミングで建て替えたらいい?建て替えに伴う相場とメリットデメリット
立ち退き料の相場
立ち退き料は法律でいくら支払わなければいけないという決まりはありません。よって双方の話し合いのもとに決めるのが一般的です。
アパートの入居者に支払う立ち退き料の相場としては、約40〜80万円といわれています。もしくは家賃の6か月分といったのが目安になってきます。
あくまでも相場の目安になります。立ち退きの事情によってはこれよりも多く支払わなければいけないケースもあります。
立ち退き料の費用内訳
アパート経営の立ち退き料の費用内訳としては、引っ越し費用や仲介手数料、家賃の負担増加分、敷金礼金の不足分といったものにプラスアルファで迷惑料といった上乗せ補償をして支払います。
もし店舗として貸している場合には、これらに加えて立ち退きをすることで営業ができなくなる期間を金銭で補填する営業補償を支払う必要がでてきます。
引っ越し費用
新居に引っ越すための費用も立ち退き料のなかには含まれます。引っ越し費用は繁忙期によって金額が大きく変わりますし、荷物の量や引越し先までの距離といったことでも変わります。
もし可能であれば繁忙期を避けて退去をお願いできるとよいでしょう。
仲介手数料
新たに住まいの賃貸借契約を締結すると仲介手数料が発生します。その支払う手数料も立ち退き料には含まれます。
一般的に賃貸の仲介手数料は家賃の1か月分に消費税をプラスした金額になります。
家賃の負担増分
仲介手数料のみならず、新居に引っ越すことで賃借人の家賃負担が増えてしまうケースもあります。しかし同等の広さのお部屋で現在住んでいる周辺かつ新築のアパートでなければ、さほど家賃負担額は変わらないでしょう。
敷金・礼金の不足分
新たに部屋を借りる場合には敷金と礼金を支払わなければいけません。敷金は一般的に家賃1か月分、礼金に関しては、昨今不動産会社や大家さんによっては礼金無料のところも増えていますが、家賃の1~2か月分が相場です。
上乗せ補償
立ち退き料の内訳には上乗せ補償の意味合いもあります。ようするに賃貸人の事情によって本来の契約期間の間、住宅を貸すことができなくなったのでその損害を賠償するということです。
上乗せ補償に関しては、どういった事情で立ち退きを依頼するのかにもよって、金額は変わります。
早急に立ち退きをしていただけなければいけないのであれば、上乗せ補償も高くする必要があるでしょうし、一定期間の猶予を与えて立ち退きを依頼するのであれば、上乗せ補償は低くてもかまわないケースもあるでしょう。
立ち退き料はそもそも法律で決まっているわけではないため、今まで見てきたような項目を根拠にして、立ち退き料の金額を算出するのが一般的です。
立ち退き料の出費を抑えるには
賃貸人からしたら立ち退き料を支払わなくて済むのであれば支払いたくないのが本音でしょう。
実は立ち退き料の出費を抑える方法はいくつかあります。どうやったら立ち退き料の出費を抑えられるのかをみていきます。
空き室が増えた段階を見計らう
当たり前ですが入居者がいなければそもそも立ち退き料は発生しません。
立ち退きをお願いするケースとしてはアパートの老朽化に伴う修繕や、アパートそのものを建て替える建て替え工事が多いでしょう。こういった工事はある程度、計画的におこなうことになります。
または空室が増えてきたのであれば部屋の間取りや外観などが時代に即しておらず、入居者が決まらないといったこともあるでしょう。
このように空室になったときを狙って、修繕や間取りの変更といった大規模工事をおこなうのも立ち退き料を少なく済ませるための方法です。
引っ越し先を提供する
立ち退き料の内訳には新居の家賃負担増分や引越し費用が含まれています。
賃借人が自分で新しい入居先を探したり、引越しの手配をしたりするのは負担がかかってしまいます。その負担を金銭的に支援するのが立ち退き料でもあります。
そのため、その負担が軽減できれば立ち退き料の支払いも減らせる可能性があります。
ただし賃借人にも新居を選ぶ権利はありますし、引越し先を選ぶ権利があります。この部分は双方の交渉になってきますので、一つの手段として考えておきましょう。
また建て替えが終わったときに再入居をしてもらうといった交渉も有効です。賃貸人からしても、建て替え後にその人が入居してくれたら新しい入居者を探す手間も省けます
原状回復を求めない
退去するときには一般的に入居者には原状回復義務が発生します。経年劣化によるものは原状回復義務がありません。
退去にともなう原状回復の場合、一般的には入居のときに預かっている敷金を元手に工事費用を賄います。もし預かっている敷金の範囲内で原状回復ができない場合には、退去時にその費用を含めて、日割り家賃等と一緒に精算をします。
建て替えや大規模修繕による退去なのであれば、退去後に部屋を原状回復する意味はありません。よって退去するときの原状回復を求めない代わりに立ち退き料を軽減するといったこともできます。
退去までの家賃をもらわない
立ち退き料の相場は家賃の6か月分といわれています。たとえば立ち退き料を支払わない代わりに次の入居先が見つかるまでは家賃を免除してあげるのも一つの方法です。
ただしこの方法を取るときに注意しなければいけないのはいつまでに退去するのか、何か月分の家賃を免除するのかを明確にしておくことです。
明確にしておかなければ、いつまでたっても家賃を支払わずに退去してくれないといった問題になりかねません。
定期借家契約を活用する
契約内容を変更して退去してもらう方法があります。通常賃貸借契約は普通借家契約で結ばれます。普通借家契約であれば、契約期間は1年以上で設定します。
もし設定しない場合には期間の定めのない契約とされ当事者がいつでも解約の申し入れが可能です。
契約期間が満了したさいには更新ができる契約になっています。一方で定期借家契約に関しては、当初定めた期間が満了したときに契約が終了となります。
もちろん再契約を締結することで更新をすることは可能です。
たとえば契約更新のタイミングで普通借家契約から定期借家契約に変更できれば、契約満了時に契約を更新せずに退去してもらうことが可能になります。
契約締結するときは双方同意のうえなので、退去するさいに立ち退き料を支払う必要はありません。
アパート立ち退きの流れ
アパートの立ち退きはどのような流れで進めていく必要があるのでしょうか。
ここからは立ち退きの依頼から、実際に立ち退きをしてもらうまでの流れについて確認をしていきます。
立ち退きの経緯を書面で伝える
まずはなんで立ち退きしていただかなければいけないのかを入居者のかたに経緯説明しましょう。のちのち言った言わない、を避けるために口頭ではなく書面でお伝えしましょう。
口頭で立ち退きの説明をする
立ち退きの経緯を書面で通知したあとには、改めて口頭で説明します。
立ち退きをお願いするにしても、相手の要望を聞いたり、こちらの事情をしっかりと伝えたりすることでこのあとの交渉をスムーズに進めていくことができます。
立ち退き料の交渉
書面および口頭で立ち退きの理由を入居者に説明をしたら、実際に立ち退きをしていただくための交渉をしていきます。交渉すべき内容はいつ退去してもらうのか、それにあたっていくら立ち退き料を支払うかです。
この交渉のなかで立ち退き料の値下げ交渉をしていくことになります。一方で、立ち退き料を少しでも節約しようとすると、かえって入居者が気分を悪くしてしまい、要望に応じてくれなくなるかもしれないので慎重に交渉をしていく必要があります。
確実に退去してもらいたい場合にはあえて相場よりも高い家賃の10~12か月分の立ち退き料を払うことも視野に入れておきましょう。
退去手続き
交渉を進めて、双方の同意が得られれば実際に退去の手続きをします。退去が確認できたら立ち退き料の支払いをおこないます。もし定めた期日までに退去が確認できない場合には再度通知をします。
もし万が一、退去をしてくれない場合には訴訟を起こさなければいけません。訴訟になったさいの争点としては、正当事由の有無と立ち退き料がどの程度であるかです。
正当性が認められたら明け渡しを強制執行することができます。
アパート立ち退き交渉の注意点
それではアパート経営するかたが立ち退き交渉をすすめるときにはどういった点に注意しなければいけないのでしょうか。その注意点についてみていきます。
注意点①本人か専門家が交渉する
立ち退き交渉をするときは必ず本人か、専門家に交渉をお願いしましょう。入居者からしたら見ず知らずの第三者から急に立ち退くように言われたとしたら不安になります。
また第三者に依頼してのちのち言った言わないの問題になってしまう恐れもあります。本人に知識がなく交渉が不安というのであれば、専門家についてもらって一緒に入居者に事情を説明したり、立ち退きに向けての計画をお伝えしたりするほうがいいでしょう。
注意点②相手方の感情を受け止める
賃貸人からしたら自分の事情によって相手に退去をお願いする立場になります。自分の事情を説明するだけでなく、相手の事情やお伝えした結果の感情を受け止めるようにしましょう。
相手にもそれなりの事情がある場合にはその気持ちを汲んであげて、お互いの妥協点を探るのも交渉を上手に進めるためのテクニックです。
注意点③引っ越したくない理由を把握する
もし相手が引越しをしたくない理由があるとしたら、その理由を把握しておきましょう。
退去をスムーズに進めるためには、相手が抱えている問題を一つ一つ探って、解消していく必要があります。引っ越したくない理由としては、自分で部屋を探す時間がなかったり、引越し業者選ぶが面倒だったりとさまざまあるでしょう。
その問題を賃貸人のほうで解消ができれば、立ち退き料の軽減にもつながるかもしれません。
注意点④交渉を無理に継続しない
交渉の末、相手が納得しない場合には無理に交渉を継続しないようにしましょう。時間をおいて再度交渉をするのか、別の方法を考えましょう。
無理に交渉を続けて、感情を逆なでしまってかたくなに拒否されてしまうと立ち退きはうまくいきません。
もし正当性があり、かつ立ち退き料の支払いも妥当なのであれば、最終手段として裁判所に訴訟を起こすのも方法です。訴訟を起こせば何らかの判決は出されます。
もちろん立ち退きが認められずに棄却される恐れもあるのは注意しましょう。
アパート経営では立ち退きに関すること以外にも、様々なリスクがあります。下記記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
大家が抱えるリスクとは?賃貸経営のメリットとともに解説
立ち退きをスムーズに進めるためには
立ち退きをスムーズに進めるためには、入居者の事情も鑑みて、双方の折り合いをつけていくことが大切です。なぜ立ち退きをしてもらう必要があるのかを説明しましょう。
そのうえで入居者がどういった反応を示したのかを注目しましょう。その反応次第で次にどういった交渉を進めるのかを決めていきましょう。
入居者に統一的な対応をするのではなく、一人一人に寄り添った交渉をしていくのが立ち退きを上手に進める秘訣です。交渉によっては支払う立ち退き料も大きく変わってきます。
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